『ドラえもん0巻』で注目の「第1話」、当時の作者が置かれていた逆境とは

引用元:マグミクス
『ドラえもん0巻』で注目の「第1話」、当時の作者が置かれていた逆境とは

 2019年11月27日(水)に発売された、てんとう虫コミックス『ドラえもん』“0巻”が累計発行部数25万部を超えるヒットとなっています。令和になっても『ドラえもん』の人気には陰りが見えません。

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 さて、この0巻ですが、6種類の『ドラえもん』の「幻の第1話」と、新連載の予告ページ、後に藤子・F・不二雄先生が描いた『ドラえもん』の創作秘話など、その名の通り『ドラえもん』の原点が楽しめる内容となっています。

「幻の第1話」とは、1969年12月に「よいこ」「幼稚園」「小学一年生」「小学二年生」「小学三年生」「小学四年生」で開始した『ドラえもん』の第1話であり、それぞれの読者の年齢層に合わせた第1話が存在しているのです。

「セワシがのび太のもとにドラえもんを連れてくる」という大筋は共通していますが、たとえばセワシがのび太の子孫であることや、ドラえもんがロボットであることは、「よいこ」や「幼稚園」では触れられません。

 学年が進むごとに、それらの設定や未来を変える目的について、徐々に詳しく説明されています。藤子・F・不二雄先生がわかりやすくするために、どれだけ細心の注意を払っていたかが伝わってきます。こうした読み比べができるのは、本書ならではの楽しみでしょう。 注目の『ドラえもん』連載第1話、その裏で作者が置かれていた「逆境」とは 「小学二年生」版『ドラえもん』第1話。ドラえもん、のび太に加え、セワシくんも描かれている(画像:小学館)  また、現在の「ドラえもん」とは異なる設定も見られます。のび太のパパとママが「あまくてのび太をぜったいにおこらない」設定であったり、ジャイアンよりスネ夫のほうがガキ大将らしく振舞っていたり、ドラえもんがタケコプターを使わなくても空を飛べたり、しっぽのスイッチを入れると透明になったり。好物もどら焼きではなくおモチだったりします。

 こうした設定の揺れは、藤子・F・不二雄先生が描きながら設定を固めていくタイプの漫画家であったことが原因ですが、『ドラえもん』の連載が予想外に早まったことも影響していると考えられます。

 本書にも、前作『ウメ星デンカ』の最終回に掲載された予告ページが紹介されていますが、そこには机から何かが出て驚いている、のび太と思しきキャラクターが描かれているだけで、ドラえもんの姿はおろか具体的なタイトルも記されていません。

 実は、連載開始一ヶ月前のこの時点で、藤子・F・不二雄先生は何も新作の構想を持っていなかったのです。では当時、藤子・F・不二雄は、どんな状況に置かれていたのでしょうか。