107分間ほとんど会話…笑える大人のダブル不倫劇 映画「冬時間のパリ」

引用元:夕刊フジ

 【エンタなう】

 冬のパリを舞台に2組の男女が人生に迷い、飲んで食べて、セックスして、とにかくしゃべりまくる107分間。名匠オリヴィエ・アサイヤスがパリの出版業界を舞台に、大人の恋を描く映画「冬時間のパリ」は、理屈っぽさの先にある、ゆるい笑いにホッとする。

 敏腕編集者のアラン(ギョーム・カネ)は電子書籍ブームが押し寄せる中、時代に食らいつこうと必死。そこへ、友人で作家のレオナール(ヴァンサン・マケーニュ)が、不倫をテーマにした新作を持ち込む。古臭いと感じるアラン。妻で女優のセレナ(ジュリエット・ビノシュ)は、不倫関係にあるレオナールの作品を高く評価する。

 一方のアランも、ITの隆盛を上から目線で進言する若き社員のロール(クリスタ・テレ)とデキていて激論を戦わせた夜、即ベッドインするテクニシャンだった。

 互いの不倫がバレそうで、気づかぬふりの大人たち。皮肉やジョークで探り合う会話劇は、ウディ・アレンの映画をほうふつさせる。デジタル化に取り残されたレオナールは、恋愛暴露本のような自身の小説が、ネットかぶれの読者に糾弾されると、「自分の知っていることを書く権利がある」と開き直る。小説家だったら、何を書いてもいいのか。1億総検閲者と化したネット社会の読者を揶揄する意地が見えて面白い。出しゃばらず大物感漂うビノシュの美貌衰えず。

 東京・Bunkamuraルシネマで上映中。全国で順次公開。(中本裕己)