片岡秀太郎、一時引退意識も「必要とされる役者で」

引用元:日刊スポーツ

片岡秀太郎(78)が出演する師走恒例の歌舞伎、京都・南座「吉例顔見世興行」(12月26日まで)が11月30日に初日を迎えた。同興行出演は70回目。今年は重要無形文化財保持者(人間国宝)にも認定された。このほど秀太郎が、日刊スポーツの取材に応じた。

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70回目の顔見世出演に、秀太郎は「感無量です。泣きつ笑いつ、70年たちました」と思いをはせた。昭和40年代初めまで上方歌舞伎は公演機会が減り、役に恵まれなかった。「次にいつ芝居ができるか分からないから、千秋楽が怖いんです」という時代を乗り越え、70回を重ねてきた。

昨年あたり、実は役者を辞めようかと思っていたという。「コーチになろうかと思いましたが、プレーしてるからこそ、若い子に教えることも注意もできる。(軽い役も)やってみるとおもしろい。芝居のプラスになれば辞めることはない。必要とされる役者でいたい」と語った。

若い世代にはユーモアを交えて助言を送る。「若い子たちの成長を見るのは大好きです。波には乗って調子には乗るな、と言ってます。地に足を着けて進んでいってほしい」と、優しく笑った。

「生涯現役」と宣言した秀太郎は、移動も公共交通機関を使うなど、なるべく体を鍛えるようにこころがけている。肺気腫を30年にわたって患っていると明かしたが、舞台ではよく通る声が魅力的だ。

人間国宝認定理由には、上方歌舞伎の技芸を伝承してきたことも挙がった。秀太郎は「うれしいです。上方歌舞伎の役者を増やしたい」と顔をほころばせた。

顔見世は秀太郎と片岡愛之助の親子が共演する「輝虎配膳」で幕が開いた。父で13代目片岡仁左衛門さんの好きな演目だ。さまざまな思いを胸に、メモリアルな年を締めくくる。【小林千穂】

・今年の顔見世は、昼の部、夜の部それぞれ4演目。昼の部は、坂田藤十郎、中村鴈治郎、中村壱太郎の親子孫3代が共演する「金閣寺」、片岡仁左衛門らによる「仮名手本忠臣蔵 祇園一力茶屋の場」など。夜の部は中村芝翫らによる「魚屋宗五郎」や、若手4人による「越後獅子」など。秀太郎は「昼と夜、全然違う趣向。顔見世では古風な古典を楽しんでもらいたい」と話している。