2019年のポップカルチャーハイライト&ローライト

2019年のポップカルチャーハイライト&ローライト

今年も終わりに近づいてきましたが、ポップカルチャーの点においては相変わらず良くも悪くも話題に事欠きませんでしたね。米Gizmodoは、今年のポップカルチャーのハイライト/ローライトをリストアップしました。

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今年は良いニュースも悪いニュースも盛りだくさんの年でしたね。でも、そんなときでもポップカルチャーがひと時の安らぎを与えてくれます。驚きと喜びを呼び起こした「ベビーヨーダ」や、皆が恐怖でひとつになったソニック・ザ・ヘッジホッグの不気味な歯など、今年も話題には事欠きませんでしたしね。以下は2019年のポップカルチャーにおけるハイライト(とローライト)のリストです。

ハイライト

コミック映画がオスカーを席巻
コミック原作の映画が興行収入で他を圧倒するようになって何年にもなりますが、それらがオスカーの対象になるような「シネマ」として扱われるべきかどうかは、『ダークナイト』でヒース・レジャーが助演男優賞を獲得して以来激しい論争の的になってきました。それは最近話題になった、マーティン・スコセッシのマーベル映画に関するコメントと、それに対する激しい怒りを見ても明らかです。それに関してはまた後ほど。

しかし2019年のオスカーは、そんな軽く見られがちなジャンルに大きく歩み寄りました。『ブラックパンサー』は最優秀作品賞こそ逃しましたが、ノミネートはされましたし、他では多くの賞を獲得しました。これによって、スーパーヒーロー映画でもジャンルの限界を押し広げるような作品であれば、作品として高く評価されるのだと証明したのです。『スパイダーマン:スパイダーバース』が長編アニメ映画賞を獲ったのも、ヒーロー映画が認められたと感じられるうれしい瞬間でしたね。

グースが有名人(猫)に
色々な意味で猫が印象深い年でしたが、いい意味で一番印象を残したのはマーベルでしょう。コミックファンの中で、『キャプテン・マーベル』の猫、チューイーが映画では原作通りのフラーケン(猫型のエイリアン)じゃなくて一瞬ガッカリした方もいたと思います。しかし、そこに颯爽と現れたのが我らがグース!

ポスターでの分かりづらいカメオ出演に始まり、次にオモチャが登場したのですが、この辺りでスタジオもグース(本名はReggie、他にも3匹代役がいます)をもっと前面に推し出すべきだと気づいたのか、猫好きのファンに直球ど真ん中な宣伝を出したりしました。Disney+で観たいスピンオフがあるとすれば、やっぱりグースの冒険でしょうか!?

マーベルスタジオ社長のケビン・ファイギがスターウォーズをプロデュース
MCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)成功の立役者の一人として誰もが認めるのが、プロデューサーのケビン・ファイギです。彼の描いた膨大なマーベルの世界を作り出すというのは、10年前には不可能だと言われていました。しかし、いろいろな協力があったとはいえ、それを可能にしたのは彼の功績だと考えられています。

そんな彼ですが、MCUを構築している最中も、スターウォーズへの愛を惜しみなく発言していました。スターウォーズシリーズは彼にとって、ひょっとしたらマーベル以上に大切なフランチャイズなのです。だから、今年の9月に報じられた、彼がスターウォーズの映画をプロデュースするというニュースは非常にエキサイティングだったのです。

考えてもみてください。10年に渡って20作品以上になる壮大なストーリーを描いた彼が、もうひとつの壮大な世界を手がけるんです! もしかしたら、スカイウォーカーに縛られがちなスターウォーズの物語を、もっと新しい方向に押し広げてくれるかも知れないですよね。

新しい『ブレイド』と『マイティ・ソー』
今年のサンディエゴ・コミコンのマーベル・パネルディスカッションは、激しい熱狂が予想されていました。観客は期待に身が震え、その空気はヒリヒリしていました。『アベンジャーズ:エンドゲーム』でインフィニティ・サーガの幕を閉じたマーベルは、MCUのその先を公開する予定だったのです。パネルはもちろん期待通りでした。2時間の間、マーベルスタジオのケビン・ファイギ(つい先ほどで出てきましたね) は、新作『ブラックウィドウ』の映像やDisney+の新情報など、爆弾のようなニュースを次々投下しました。

でも、パネルの中で最も印象深い瞬間は、マーベルヒーローの仲間入りを果たしたキャラクターの発表でした。まずは、『マイティ・ソー』の第4作目、『Thor: Love and Thunder』の製作が発表され、ナタリー・ポートマン演じるジェーン・フォスターが、コミックに倣って新たなソーになることが判明しました。それだけでなく、オスカーを2度受賞したマハーシャラ・アリがウェズリー・スナイプスを継いで新たなブレードを演じることも発表されました。どちらもファンにとって大きな衝撃でしたが、それは単純にエキサイティングなだけでなく、現実の世界に沿った多様性を、ようやくマーベルスタジオが受け入れたと見られたからです。

高校生による驚きの再現度の『エイリアン』
ニュージャージー州、North Bergen High Schoolの演劇部の生徒たちが、リドリー・スコットの『エイリアン』を劇として演じたことで大きなニュースになりました。国語の教師を務めるPerfecto Cuervo氏が監督したこの劇は、わずかな予算を機転と想像力でカバーし、再現度の高い特殊効果や驚くほど見事なゼノモーフのコスチュームを作り上げました。劇は、エイリアンのファンはもちろん、監督のリドリー・スコットや主演のシガニー・ウィーバーにまで高く評価され、特にシガニーは4月26日(別名エイリアンの日)に行われたアンコール上演に来客して、部の監督、スタッフ、キャストをビックリさせました。

Star Wars: Galaxy’s Edgeが公開
スターウォーズを観た人は多くても、その世界に住んだことはもちろんありません。しかし、カリフォルニア州のディスニーランドとフロリダ州のウォルト・ディスニー・ワールドに今年登場したStar Wars: Galaxy’s Edgeが、それを変えました。新たに14エーカー拡張された施設は豪華で没入感が高く、スターウォーズの世界に忠実でした。つまり、『スターウォーズ』と書かれたTシャツを着たスタッフがいるなどというレベルではなく、惑星バトゥーで勃発した反乱軍とファースト・オーダーの抗争の真っ只中なのです。

オープン当初は誰もが期待したようなヒットではなかったし、批判する人も多いようです。しかし、私たちのような多くの人々にとっては、スターウォーズの世界に一日でもいいから住んでみたい、という夢を叶えてくれるのです。自分専用のライトセーバーを作ったり、ミレニアム・ファルコンを飛ばしたり、ブルーミルクを飲んだり、宇宙港カンティーナでひと時を過ごしたり、さまざまなことができます。もしあなたがスターウォーズ ファンなら、Galaxy’s Edgeは実にユニークな体験をさせてくれるでしょう

ベビーヨーダ…この一言で十分
私たちがDisney+のローンチを心待ちにしていた大きな理由のひとつは『マンダロリアン』です。スターウォーズ としては初めての実写のTVシリーズということで、リリース前からの熱気は凄じく、キャストと製作チームの公開、続いて興味をそそる画像やクールな予告映像で盛り上がりました。そして11月12日に公開された本編は、期待を裏切りませんでした。スターウォーズの世界観を大きく広げ、寡黙な賞金稼ぎを私たちに紹介しつつ、ヴェルナー・ヘルツォークを惜しみなく出演させてくれました。

しかし最も衝撃的で、『マンダロリアン』、いやスターウォーズすべての見方を大きく変えてしまったのは、第一話の最後の一瞬。ベビーヨーダの登場です。多分実際の名前はそうではないと思いますが(本編では「The Child」と呼ばれる)、その呼び名は一瞬にして広まりました。そのあまりの愛らしさは瞬く間にネットに広まり、さまざまなミームの対象にされ、商品化を叫ぶ必死の声を生み出しました。

『ゴーストバスターズ/アフターライフ』の初予告公開
映画の発表は、ある意味ルーティンワークになっています。インターネットで製作発表を知り、キャスティング決定のニュースなんかを追ったりして、最後にトレーラーが公開。その繰り返しです。しかし、新しい『ゴーストバスターズ』の公開に関し、ソニーとジェイソン・ライトマン監督は違うアプローチを試みました。オリジナルの共同執筆者であり、監督のアイヴァン・ライトマンの息子であるジェイソン氏がシリーズを監督すると発表された数時間後にはティザーが公開されたのです。勿論、映像は本当にわずかで、恐らく本編には使われすらしないものだったでしょう(今はちゃんとした予告があります)。しかし納屋の中、布に覆われたECTO-1の映像は、世界中のゴーストバスターズファンの想像力を掻き立てたのです。映画を発表するなら、これくらいやらないとね!

ソニックのデザインが修正
映画『ソニック・ザ・ヘッジホッグ』の最初の予告が公開された途端、インターネットには恐怖の悲鳴がこだましました。監督のジェフ・ファウラーは完全なリデザインをファンに約束しましたが、これには警鐘を鳴らす声もありました。映画でドクター・エッグマンを演じたジム・キャリーは、「映画の製作にソーシャルメディアがここまで影響力を持つべきではない」と発言し、また、すべてを作り直さなければならないVFXチームにかかる負担も、主にCG業界から聞こえてきました。しかしありがたいことに、パラマウントは修正のために3ヶ月公開を遅らせることにしたのです。

結果は上々で、11月に公開された予告第二弾は、よりソニックらしいデザインになりました。ソニックのコミック版などを担当したり、米国では古くからソニックに関わっていたことで有名なTyson Hesse氏がリデザインに協力したこともあり、恐怖でしかなかったソニックは楽しくて生き生きとしたものになったのです。映画自体は一般的な子供向け映画に見えますが、果たしてリデザインに使われた時間、苦心、資金に価値があったかどうかは、まだわかりません。でも少なくとも、あの不気味な歯がなくなっただけ良かったのでは?

『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー Vol. 3』のためにジェームズ・ガンが復帰
『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー Vol. 1』と『Vol. 2』の監督、ジェームズ・ガンがドナルド・トランプ大統領を批判したことに対し、保守系の活動家たちは彼を貶めるための喧伝を行いました。その武器は、彼が昔Twitter(ツイッター)に投稿した、性的暴力や幼児性愛をネタにしたジョークです。もちろんそれらのジョーク自体は非常に問題な発言なので彼も謝罪しましたが、時すでに遅し。ディズニーは彼を『Vol. 3』の監督から降ろし、映画の製作自体を凍結しました。…とりあえずその時はね。

しかし今年の3月、ジェームズが 『Vol. 3』の監督に復帰したと発表。しかも実際には、ウォルト・ディズニー・スタジオの社長であるアラン・ホーンとの長い交渉の末、発表の数ヶ月前にはすでに契約していた様子でした。待ち望んでいたファンはホッと一息つきましたが、ジェームズにとっては反省の機会になったようです。のちのインタビューにおいて、自分の発言に対してすべての責任を負うこと、そしてこの一連の体験は学ぶ機会になったとしています。彼は、ツイートを理由にディズニーがクビにしたのは、当然のことだと思っているそう。実は彼、ディズニーに復帰するまでの間にDCと契約し、『スーサイド・スクワッド』の続編の監督が決まっていたので、『Vol. 3』の製作はそちらが完成した後になります。

AziraphaleとCrowleyのロマンス
LGBTQの人々は、映画、テレビ、アニメを問わずあらゆるジャンルのファン層の、実はかなりの大部分を占めていたりするのですが、作品上でそういったキャラクターが出る機会がまだまだ少ないため、好きな作品を深読みし、ロマンスがないところにロマンスを作り出すしかないという状態がまだ続いています。Amazon Prime(アマゾン・プライム)で公開された『Good Omens(グッド・オーメンズ)』のAziraphaleとCrowleyの間には決して性的な要素はないのですが、彼らの千年以上の友情はプラトニック以上に見えてなお、純粋で心を打ち、観客に共感を呼びました。

ロックな合体が誕生
『スティーブン・ユニバース』において、新たなジェムの合体はいつも盛り上がるのですが、スティーブンがコニー以外の人間と合体するのは本当に久し振りなので、ステグ・マルチバースなんてワイルドな展開を誰も予想していませんでした。『スティーブン・ユニバース』において、合体はキャラクター同士の様々な愛の形の象徴として使われます。愛と一言に言っても、健全なもの、プラトニックなもの、あるいは不安定なものや、虐待的なものなど色々あります。しかしステグの場合は、スティーブンとグレッグの間にシリーズを通して築かれた、家族のような絆を表現しています。ちょっとしたすれ違いから、いかに絆が壊れかねないかに重きを置きがちなこのシリーズにおいて、これは貴重な瞬間です。

『ウォッチメン』のおかげでタルサが知れ渡った
オクラホマ州タルサにおける、1921年のブラック・ウォール・ストリートの暴動は、米国史において大きな転換点でした。しかし、米国の教育システムにはびこる組織的な人種差別が原因で、多くの人(主に黒人以外の人)はHBOの『Watchmen(ウォッチメン)』を観るまで聞いたこともありませんでした。原作のコミックはもちろん高く評価されていますが、それにしてもそれを元にしたテレビシリーズが、米国の文化の中でも黒人に対する人種差別に深く根ざした部分を題材にし、思慮深く丁寧に描くとは誰も予想しませんでした。しかし、全9話のひとつひとつで『Watchmen』は見事にそれを成し遂げました。その成功の背景には、プロデューサーのデイモン・リンデロフが描いた初期コンセプトの素晴らしさがあります。同時に、『ウォッチメン』を取り巻く人種差別や警察による暴力の痛ましく複雑な現実に対して、繊細でバランスのとれた視点を提供できる、多種多様な声が脚本チームに必要だと理解していたHBOも大きく貢献しています。

ローション男は結局何者 !?
HBOの『ウォッチメン』は、とにかく大胆さが自慢です。驚きのどんでん返しや衝撃的な展開、そして今年だけでなくテレビ史に名を残す数々の名シーンのおかげで、2019年のテレビチャートのトップに一気に上り詰めました。しかしどんな名シーンも、第4話(『If You Don’t Like My Story, Write Your Own』)に登場したとある人物には敵いません。その名も…Lube Man(訳注:ローション男)。

こんなシーンです:我らがヒーロー、Regina Kingの演じるAngela Abarはコスチュームに身を包み、パトロール中。視線を感じた彼女は通りの反対側を見ます。確かに彼女は見られていました…全身をギンギラギンのスパンデックスに身を包んだ男に。彼は突然逃げ出します。彼女もそれを追いますが、男はベルトに差していたボトルの液体を自分の体にかけ、道路上をスライディングして排水溝に滑り込んで姿を消しました。彼はその後一切物語に出てきません。

ちなみに、いまだに何の説明もありません。ただ分かっているのは、アンジェラ同様、視聴者も何が何やらまったくわからない、美しい数分間に出会ったということです。

MCUのLGBTQヒーローが発表される
MCUは、LGBTQを代表するキャラクター、特にストーリーを左右する重要な役柄が待ち望まれていました。しかし今年、スタジオはついにそんな状況が変わると発表しました。サンディエゴ・コミコンにて女優のテッサ・トンプソンとケビン・ファイギが発表したところによると、2017年の『マイティ・ソー バトルロイヤル』で彼女が演じたヴァルキリーが、2021年の『Thor: Love and Thunder』でちゃんとしたLGBTQのストーリーラインを得るとのこと。

それだけではありません。その1ヶ月後、ファイギは2020年公開の『The Eternals』にも、公表されていない同性愛者のキャラクターがいると発表したのです。唯一ファイギと製作チームにお願いするのは、キャラクターがLGBTQに対する理解の元に描写され、それがMCUの世界にさらに多様なキャラクターを生む礎となることです。

マトリックス4
『マトリックス』は、2003年で終わったものだと誰もが思っていました。しかし、ハリウッドはどこまでいってもハリウッド。ウォシャウスキー姉妹による革命的なSF映画シリーズは、続編が何年も噂されていましたが、今年まで正式な発表はありませんでした。ラナ・ウォシャウスキーが監督し、キアヌ・リーヴスとキャリー・アン・モスが改めてネオとトリニティの役を演じると発表されましたが、今、本当に現実世界なんでしょうか?

キアヌサンス
正直な話、キアヌ・リーヴスが格好悪かった時代なんてないんです。でも2019年は彼にとって、特にギーク的な面で大活躍な一年でした。『トイ・ストーリー4』ではバイクスタントマン、デューク・カブームの声を演じ、『ジョン・ウィック3』では洪水のような量の弾丸をぶっ放し、ゲーム『サイバーパンク2077』ではサプライズ出演を果たしました。さらにカートゥーン映画の『Spongebob Movie: Sponge on the Run』ではタンブルウィードの声をあて、ビル&テッドの最新作『Bill and Ted: Face the Music』では久しぶりにエクセレントなエアギターを披露し、極め付けには『マトリックス』シリーズの最新作まで待っています。しかもまだ2019年が終わるまでには少し時間があるので、もしかしたら、ずっと噂されていたMCU入りもあるかも?