“コピーライティング力”凄かったZARDの坂井泉水さん 「メロディーを最大限に生かす言葉を見つけてくれる人」 織田哲郎・あれからこれから

引用元:夕刊フジ
“コピーライティング力”凄かったZARDの坂井泉水さん 「メロディーを最大限に生かす言葉を見つけてくれる人」 織田哲郎・あれからこれから

 【織田哲郎 あれからこれから Vol.48】

 1996年1月、アニメ『スラムダンク』のエンディングテーマに使用されたZARDの「マイフレンド」がリリース。3月にはアニメ『ドラゴンボールGT』のオープニングテーマ曲となったフィールド・オブ・ビューの「DAN DAN心魅かれてく」がリリースされました。どちらもZARDの坂井泉水さんとのコンビでの作詞作曲です。

 今回は少し作詞というものについて話をしたいと思いますが、私は作詞には3つの要素が必要だと思っています。

 (1)コピーライティング力。ポップスはパッと聴いただけでメロディーと一緒に言葉が耳に残ることが大事です。

 (2)純粋に“詩”として人のイメージを喚起できる言葉力。

 (3)ストーリーテラーとして、数分間の歌の中で感情を揺さぶるストーリーを伝えられる構築力。

 優れた作詞家はみなそれぞれのバランスでこの3つの要素を持っています。ただ昭和の時代は(3)のストーリーテラーとしての要素がとても重要でしたが、最近は具体的なストーリーが見え過ぎること自体が古臭く感じられる傾向で、(1)と(2)が重要視されるようになっています。

 坂井さんとはいろいろな作品を一緒に作りましたが、彼女は特に“コピーライティング力”が素晴らしかったと思います。たとえば「負けないで」という曲のサビの頭の部分は、今となっては「負けないで」という言葉のためのメロディーだったとしか思えません。「DAN DAN心魅かれてく」もやはり一度聞いただけで歌詞がアタマにこびりつきます。インパクトを出すために奇をてらうのではなく、メロディーを最大限に生かす言葉を見つけてくれる人でした。

 WANDSの上杉昇くんとも「世界が終わるまでは」「このまま君だけを奪い去りたい」などを一緒に作りましたが、彼は素晴らしい“詩人”だと思います。

 話はそれますが、私はポップスやロックの世界でシンガーが“アーティスト”と呼ばれることに自分を含め違和感があります。基本的にポップスにおけるシンガーは“エンターテイナー”で、ポップスを作る人は“職人”だと思うのです。アーティストというのは、例えば草間弥生さんのような人のことではないのかと思ってしまうのです。これは別にどちらが上とか下とかという話ではありません。ただ、ジャンルの違いです。

 最近、上杉くんと一緒に演奏する機会がよくあります。彼は素晴らしいシンガーでもありますが、私は彼の本質はアーティスト寄りの“詩人”なのではないかと感じています。

 ■織田哲郎(おだ・てつろう) シンガーソングライター、作曲家、プロデューサー。1958年3月11日生まれ。東京都出身。現在「オダテツ3分トーキング」をYouTubeで配信中(毎週土曜日更新)。12月21日(土)に『クリスマススペシャルライブ』をモーション・ブルー・ヨコハマで開催。弦カルテットとの共演による『幻奏夜IV』は20年2月16日(日)=東京・丸の内コットンクラブ▽23日(日)=名古屋ブルーノート▽同24日(月・祝)=ビルボード大阪-で開催。一般予約を受付中。詳しくは公式サイトt-oda.jpへ。