映画「決算!忠臣蔵」が大健闘 討入りなしでも満足度大の理由

映画「決算!忠臣蔵」が大健闘 討入りなしでも満足度大の理由

 女性や子供たちの間で大ヒット中の「アナ雪2」ブームに隠れているが、「決算!忠臣蔵」も、客層は違えど堅調な興行を繰り広げている。公開から3週目も興収ランキング5位に食い込み、4週目も堅調。アニメや洋画大作が並ぶ中で異彩を放っているのだ。

 とはいえ忠臣蔵といえば、この時期の定番ながら食傷気味なのもまた事実。それでも本作には、類似作品とは一線を画する特徴があるという。映画批評家の前田有一氏がこう解説する。

「なんとこの映画には、吉良邸討ち入りのシーンがありません。その代わりに、主君亡きあと倒産状態に陥った播磨赤穂藩が、財政的事情で討入りに追い込まれる裏事情と、討入りの詳細な予算内訳の発表がクライマックスになっています」

 堤真一と岡村隆史のダブル主演で、監督は「殿、利息でござる!」(16年)の中村義洋。東京大学の山本博文教授の歴史解説書「『忠臣蔵』の決算書」を元に、中村監督自ら脚本化したオリジナル作だ。

 舞台は1701年、浅野内匠頭の不祥事でお取り潰しが決まった浅野家。彼らは筆頭家老・大石内蔵助(堤真一)を中心に、お家再興に向け動き出していた。だが血気盛んな家臣や江戸の庶民らは吉良上野介へのあだ討ちを熱望。大石も心動かされるが、幼馴染の矢頭長助(岡村隆史)ら勘定方が「そんなカネは無い」と猛反対。そうこうする間にも、最後の残り金800両(約9500万円)は強硬派の無駄遣いによってみるみる減っていく。

「武士の浪費を勘定方が叱責するシーンなどは、経理に叱られシュンとなる営業マンそのもの。みみっちい節約やおカネのエピソードは爆笑確実、現代の庶民からみても共感度抜群です。しかも東大教授の研究書に忠実だけあって、これが史実にもっとも近い忠臣蔵だというのだから驚きです。討入りチャンバラがメインでない分、こうした歴史トリビアやドラマに力が入っていて、意外にも満足度は変わらない。そもそも忠臣蔵映画はSFから現代劇まで多種多様で、たまには”おカネと経理エンタメ”版の忠臣蔵もアリでしょう」(前田氏)

 経費削減と消費税増税に悩むサラリーマンにとっては、「アナ雪2」よりもこちらが面白そうだ。