アニメ作品のクオリティやスケジュール、予算に責任を持ち、関係者とのコミュニケーションも欠かせない「企画」の仕事には、どのような「夢」があるのでしょうか。アニメ企画の仕事について、数々の人気タイトルを送り出す、株式会社ジェンコの中尾幸彦プロデューサーに聞きました。
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――アニメの企画という仕事には、予算や作品クオリティのコントロール以外にも、大変なことがたくさんありそうですね。
中尾幸彦さん(以下、敬称略) ええ。特に権利関係の取り扱いには、常に細かく気を配る必要があります。現在TV放映中の『放課後さいころ倶楽部』では、作中に登場する全てのボードゲームについて、事前にメーカーさんから許諾を得ています。プロデューサーとして当然やるべきことではありますが、事務的なコストもバカになりません。手をつけるからには、最後までやり切る決意と覚悟が必要です。
――企画プロデューサーとして、最もやり甲斐を感じられるのはどんな点ですか?
中尾 「こんなアニメを作ってみたい」という想いを、夢や願望にとどまらず、具体的な計画として検討できる点です。演出家だった頃は、常に「与えられた原作を、さらに良くするためにはどうすれば良いか?」という観点から、仕事をしていた気がします。それはそれで大切ではありますが、自分としてはもう一歩手前の、原作探しの段階から作品を立ち上げてみたかった。だからこそ、企画プロデューサーをやろうと思ったんです。
――その原作選びは、どのように行われているのでしょうか?
中尾 自分でも常に探していますが、出版社さんやゲーム会社さんなどから、「これをアニメ化できないか」と持ち込まれることも多々あります。全てをアニメ化することはできませんので、残念ながらお断りせざるを得ない場合もあります。その場合でも、可能な限り詳しい理由や広く募った意見をつけてお戻しする、といった努力は怠らないようにしています。そうすることで、その原作にとってより良い道やパートナーを見つけるきっかけになるかもしれませんから。
――中尾さんが原作に触れて、「これならアニメ化できる!」と確信される、決定打のようなものはありますか?
中尾 「自分自身が愛せる原作かどうか」というのが、大きいように思いますね。「売れそうかどうか」は、もちろん重要な判断基準です。その一点で割り切るのが最も合理的なやり方なのでしょうが、ヒットするかどうかは正直、世に出してみなければ分からない部分が大きい。
それでも、プロデューサーとして最後まで責任を持たなければならないとしたら、やはり、心から好きな原作かどうかが重要でしょう。そうでないと、命運をともにすることはできませんから。
アニメの企画プロデューサーには、どんな「夢」がある? ジェンコ・中尾幸彦氏に聞く
引用元:マグミクス