大阪・西成で出会った…立ちホルモン“驚愕の逸品” こだわりの極意

引用元:夕刊フジ

 【こだわりの極意】

 恐ろしいほどすごい店がありました。

 「やまき」! 大阪のディープタウン西成にある立ちホルモンだ。

 並ぶ! とにかく並ぶ! 1時間以上並んだだろうか。上を見上げれば一両編成の電車が通過していく。潔いほどの超ガード下だ。しかも横には洋服売ってる店が…。ここで買えば、もれなくホルモン風味の服になるわけだ。

 牛歩戦術のように進むにつれ、香ばしい匂いが鼻腔を刺激する。腹が減った。これは拷問だ。

 みんな刺すような目で食べている人を射る。若い衆が長居してると、そこかしこから、「あいつら長いなぁ~」の声が。常連らしいおっちゃんたちはババッと食べて「お父さん、お勘定!」と粋だ。人間力が問われる。

 そうこうしているうちに鉄板前のプラチナエリアに到達。たった1人で黙々とホルモンを焼き続けるお父さん。次から次に入る注文への反応がすごい。これはまわりの常連さんの注文の仕方をまねるしかない。

 「きもイチ! アブラちょうだい」「お父さん、ビール!」「お父さん、ハイリキ!」とガンガン注文が入る。尻込みしてる場合ではない。負けじと声を張る。

 焼き上がるまではすでにできているホルモン串を2度づけ禁止の刻みニンニクが死ぬほど浮いてるタレにつけて食べる。

 う、うまい!

 「アブラってなんだろう」と注文すれば、豚好きにはたまらない完全なる豚の脂肪の鉄板焼きではないか。これもまた、ニンニクだれに合う独特の甘みがたまらない。

 が、しかし、この店の驚愕の逸品はなんといっても、きも、つまりレバーだ。串で突き刺し、口に運び、噛んだ途端、「なんだ、この噛みごたえは!」と誰もが驚くだろう。

 柔らかいとか溶けるとかのヤワなレバーではない。それこそザクッザクッという歯触り。こんなの食べたことない。またハイリキが合う。

 鉄板で豪快に焼いていくが逐一、焦げやら余分な油は捨てていく。そのひと手間こそがここの旨さの隠れた秘密だろう。

 大行列のためババッと食べて、店を後にしたが、2人で8品ほどにハイリキ2本飲んで1400円いかない!

 信じられない! ここには絶対に戻ってくると固く誓った初西成ツアーだった。大阪はとにかく奥深い。 

 ■高嶋政宏(たかしま・まさひろ)1965年10月29日生まれ。東京都出身。87年、映画「トットチャンネル」で俳優デビュー。昨年出版した「変態紳士」(ぶんか社)も大ヒットした。CS旅チャンネルで「高嶋政宏の旅番長“激動!ベトナム縦断編”」が放送中。