課題山積みの芸能人の移籍問題 契約書改訂した音事協を直撃「双方が納得できるよう契約内容を透明化」

引用元:オリコン

 芸能事務所の移籍に伴うトラブルが世間の耳目を集めるなか、公正取引委員会(公取委)からも一部芸能事務所への注意喚起も行われる事態に発展。先ごろには公取委が改めて「芸能事務所を退所した芸能人の活動を一定期間禁止する契約は独禁法違反に当たる」とする見解をまとめたとの報道もなされた。この度、日本音楽事業者協会では、公取委の助言も得ながら、これまでに芸能事務所とアーティスト・タレント間で結ばれていた契約書のひな型「専属芸術家統一契約書」の一部を改訂し、12月3日には変更点を公式発表した。問題の背景や変更の意図を同協会・中井秀範専務理事に聞いた。

【実物写真】改訂された「専属アーティスト標準契約書」の中身

■事務所側の契約期間の延長請求に一定の制限、「移籍金」も明文化

 今回、日本音楽事業者協会が改訂した内容について、同協会専務理事・中井秀範氏は「これまで自明の理としてあえて条文として規定していなかった芸能プロダクションとアーティストの関係性を明確にし、お互いが対等な立場で、双方の発展・成長に寄与していく、ということを明文化しました。それ以外の変更点についても、契約の段階で双方がより納得できるように契約内容を透明化させました」と解説する。

 具体的には、まず「専属芸術家統一契約書」という名称について、“芸術家”という表現が時代にそぐわず、さらに「統一契約書」という表記も、この契約書を同協会の会員社に強制するものであるかのような誤解を与える向きもあり、「専属アーティスト標準契約書」に改めた。

 また、現在の問題の発端であり、契約書改訂の契機となった「移籍」および「契約期間延長」に関する部分については、改めて「移籍金」についての内容を明確に契約条項に盛り込んだ。

「これまではプロダクション側から“1回に限り、前回契約期間と同じ期間の延長をアーティストに請求できる”というやや抽象的な条文のもと抑制的に運用してきましたが、この『期間延長請求権』を行使できる条件を明確にしました。“アーティストの知名度(パブリシティ価値)、業績、稼働年数と、プロダクション側がそのアーティストに投下した資本に『不均衡』が生じている場合”に限り、1回だけ延長を請求することができる、とし、アーティスト側では、その不均衡を補てんできる金額を支払う、いわば移籍金の支払いによって契約を終了させることができるようにしました」(中井氏)