獣道を突き進むウォルピスカーター、歌い手シーンの変化とは

引用元:MusicVoice
獣道を突き進むウォルピスカーター、歌い手シーンの変化とは

 歌い手のウォルピスカーターが25日、アルバム『40果実の木』をリリース。2012年から動画配信サイトで活動を開始し、圧倒的な歌唱力と磨き抜かれたハイトーンボイスが話題のウォルピスカーターに本作を中心にインタビュー。ハイトーンが生まれた背景、現代においての情報の受けかたについて、2012年から現在にかけての歌い手シーンの話、そしてこれからのビジョンについてなど、多岐にわたり話を聞いた。【取材=平吉賢治】

高い声を出すことを諦めなかった

――普段どんな音楽を聴いていますか。

 ジャンルにはこだわらず、特に好きなバンドなどもなく、この曲が好きというのが点在しているような感じです。「好きなバンド」と公言するのが苦手というか、好きなバンドの話をすると「じゃあこのアルバムは当然聴いているよね?」となるけど、そういうやりとりが少ししんどいと言いますか(笑)。 自分の意思で音楽を聴きたいという部分があるんです。

――確かにそういう話の流れはありますね。2012年に動画投稿サイトで活動開始したきっかけは?

 高校時代にやっていたバンドが解散して歌う場所がなくなって、生きる上での趣味を失ったというところがあったんです。その時に友達から動画投稿サイトがあると聞いて、機材を揃えてニコニコ動画から始めました。

――最初の感触はいかがでしたか。

 最初の数年間は本当に再生されませんでした。始めて1年くらいは100再生いったらいいくらいで。2、3年目くらいで千、1万再生…4年目くらいから多くの人に聴いていただけるようになったと思います。

――何かきっかけが?

 今でも仲の良い「歌ってみた」をやっている人がツイートしてくれたのがきっかけかな。「名前メチャクチャ変なのにちゃんと歌ってる」みたいな感じでツイートしてくれて。そこから人の目に触れる機会が増えたんだと思います。それでたまたま大人気になりつつある作曲家さんの曲を歌ったら一緒に付属品としてくっついていったというか(笑)。

――それはネット上での活動ならでは?

 そうだと思います。ファンの方が自分から急上昇クリエーターを発掘しないといけない時代だったので。まだ流行っていない人を見つけて、その人を育てるというのが楽しい時代だったので、その時代に僕がうまく滑り込んでみんなに育ててもらった感じです。

――その頃の環境と今の環境は違うと感じる?

 全然違うと感じています。ニコニコ動画でやっていた時はリスナーの方に見つけてもらえたんです。あまり宣伝をしなくてもファンの方が自分から掘って探してくれて、それをコミュニティで共有してくれたというのがあったので、当時はあまり宣伝しないスタイルのほうがカッコ良かったというか。

――今はどうでしょう。

 今はできないです…宣伝もしなければいけないし、サムネイルも工夫しなければいけないし、動画を上げた、曲を上げたということを色んな所に出してもらわないといけないというか。言いかた悪いかもしれませんけど、お金がかかる時代になったのかなってちょっと思います。

――リアルですね(笑)。

 今まではニコニコ動画はアマチュアの世界だったと思うんですけど、今はYouTubeが主戦場というところもあるじゃないですか? プロのシンガーや俳優、芸人の方などプロの方々が集まってくるところに、資金力という面ではアマチュアには太刀打ちできない部分が大きいと思うんです。YouTubeを主に観ているファン層の方は自分が知っているものを検索することはできますけど、自分が知らないものを一から掘り起こして探すというのはYouTubeの仕組み的になかなか難しいと思うんです。そういう部分で、戦い方の変化という戸惑いもあります。

――その場所での戦略的な部分も大事になってくるのですね。

 そう思います。需要と供給を理解しつつキャラクターも立てつつ、それを崩さないようにプロモーションしてというのは一人でやるのはなかなかしんどいです(笑)。でもこれからどんどんやっていきたいと思います。

――キャラクターという部分ではハイトーンボイスという点が大きいと思います。キーはどれくらいまで高音が出せるのでしょうか。

 音で言うと「hihi D」、高いDの音まで出ます。女性が普段使うキーよりも若干高いくらいだと思います。今作の初回限定盤のDISK2(ボーカロイドの歌ってみた)を聴いて頂ければ今現在の僕の最高音がわかると思うので是非聴いていただきたいです!

――特別な訓練をしたのでしょうか。

 とにかく「高い声を出そう!」という試みを続けた結果こうなりました。ボーカロイドの曲を原曲キーで歌いたかったんです。普通はカラオケなどで高い声が出なかったら諦めてキーを下げるじゃないですか? 僕はそれを諦めなかっただけというか(笑)。