3人組バンドのアイラヴミーがデジタル配信シングル「答えを出すのだ」をリリースした。本作はNHK『みんなのうた』(2020年2月~3月放送)への書き下ろし曲。2016年に結成され、さとうみほの(Vo&Gt)、野中大司(Gt)、井嶋素充(Ba)から成る。昨年9月にアルバム『でも生きている』でメジャーデビュー。今作は「そのままの自分でいい」と聴く者に寄り添う作品で早くも反響を呼んでいる。今作に込めた想いや制作エピソードについて楽曲制作の中心を担う、さとうみほのに話を聞いた。【取材=平吉賢治】 アイラヴミー・さとうみほの
言いたいことが誰か届くべき人に届いたら一番嬉しい――今作はNHK『みんなのうた』書き下ろし曲ですね。どのような想いで作りましたか。
「“みんなのうた”になる歌を」ということなので、みんなのために書いた曲です。今までは自分のために曲を書いていたところもあるんです。「こんな自分嫌いなんだ」という気持ちの出しどころとして曲にしたりしていたけど、NHK『みんなのうた』は「みんなに向けてのうたをモットーに番組を作っている」という話を聞いて納得したんです。「みんなに向けて書くならどういう曲かな」と考えたところで、今までと決定的に違ったことがあったんです。
――本作ではそこが楽曲になっている?
「これを聴いてくれた人にどうなってほしいか」「みんなの未来がキラキラしたらいいな」と。そこを初めて考えて作ったんです。そこが今までと一番違ってチャレンジしたところでした。
――歌詞の言葉はかなり吟味したのでしょうか。
歌詞は何回も最初から書き直したりしました。10回以上は一旦なしにしました。
――ファンからは「背中を押された」「励みになった」「こういう言葉がほしかった」「自身と重なって響いた」というような声が上がっていますが、そこに対して意識はあったのでしょうか。
凄く嬉しいです。意識をしたというよりも、自然に湧き出てきました。春という季節もあるのか、私自身も学生時代を思い出すことが多いんです。学校って先生がいてテストがあって問題と答えがあって…必ず正解があるものを解いていたし、いつも問題を出されていたから自分は答えるだけでよかったし、ずっと正解を探すような生きかたをしてきたんです。でも学校にいない今、問題を出す先生はいないしテストもないし、むしろ正解なんてどこにもないと思うんです。
――自分で問題を探す、ということも出てくると思うんです。
それが一番難しいと思って。曲を作る時も常に自分で問題を探して答えを出すという作業で。それこそ「この曲がどうなって、どういう人に届いてほしいな」とか「自分がどうなりたい」とか。もっと言うと「自分にとってのいい曲って何だろうな」と。それが自分に問題を出すことであって、そこで曲をひとつ完成させることが答えだと思います。曲作りに限らず、大人になるって自分に問題を出して答えを出していくことなんだろうなって思っていて。自分自身、自立したくて書いた曲でもあります。
――今のアイラヴミーの答えとしてこの曲ができた、という捉えかたもできるでしょうか。
そうです。自分で曲を作っていると良いのか悪いのか正直わからないんです。自分が本当に思っていることだけ書いているから、むしろ、それが良いか悪いかの判断がなくて。だから良いのも悪いのも反応してくれたことがまず嬉しいんです。もちろん「良い歌」と言われるのが一番嬉しいんですけど(笑)。それで「背中を押された」とか言ってくれる人がいると、私も背中を押してもらえるんです。バンドも世界も、一緒に大きくなっている感じがしてその時が一番幸せを感じます。
――作品作りというのは、それこそ答えがないように思えます。
ないです! 自分の気持ちをどんどん旗を立てていくというか、正解、不正解にせよ自分の気持ちを土に刺していく。それに反応してくれるかそうじゃないかというだけで。言いたいことが誰か届くべき人に届いたら一番私は嬉しいです。
――歌詞に<自分らしく生きようとすればするほど 胸がぎゅっとするんだ>とありますが、“自分らしさ”についてどう考えますか。
私にとって自分らしさとは、「自分が本当に思っていることを言うこと」です。人の目を気にせずに思っていることをちゃんと言葉にすることです。
――例えば、思っていることを言葉にした時「それは違うよ」と言われたらどう思いますか。
それはその人の意見であって、私の意見はこれ、というだけだから「色んな意見があるね」って(笑)。
――自分らしさをみんなが出し合って互いに尊重し合えると、その時々で答えが出てくるというのもあるかもしれませんね。
そういうのもあって、考えることをやめたくないというのもあります。
――逆に、自分らしさを抑えて考えなくなるとどうなると思いますか。
それはそれでアリだと思うんですけど、なんか楽しくないんですよね…自分に問題を出して答えを出さなくても、もちろん生きていけるんですけど、キラキラしないというか自分を生きている意味がなくなっちゃうのが嫌で。
――自分らしさを大切にという点は、本作だけではなくこれまでのアイラヴミーの作品に共通しているテーマだと感じます。
自分らしさは大事にしたいところだと思います。私もよく気づいたら考えて生きていないというか、人からもらった正解に「うんうん」って言ってそのままというのもあるけど、そういう経験がいっぱいあったからこそ気づいたし…自分に問題を出して答えを出せなくても、そういうことがあって気づけるわけで、その状況が良くないというわけではないと思うんです。
どこかでハッとなって気持ち的に具合が悪くなったりすると「これは自分を生きていないからだ」と思ったりして。それでこの曲が出来たから、全部のことに意味があると思います。何をやっていても、無意味でも、どこかに自分にとっての意味があるポイントがあると思うから、そこに気づけたら最高だって思いました。
――その時は無意味だと思っても、後々点と線が繋がって大きな意味になる、ということも確かにあると思います。
そう思います。さっき挙げてくださった<自分らしく生きようとすればするほど 胸がぎゅっとするんだ>という歌詞のところ、何回も書き直した部分なんです。
――個人的にはそこが重要な部分と感じたのですが、聴く人によって重要だと感じる部分が様々ありそうですね。<問題を出してくれる人 正解をくれる人はもういない>という部分だったり。
そうかもしれないです。だからこそ<自分らしく生きようとすればするほど 胸がぎゅっとするんだ>という部分に注目してくれるのは嬉しいです。
――受け手によって様々な答えがある楽曲、というのも面白いですね。
『みんなのうた』を通してもだし、色んなものを通して本当に今必要としてくれている人に届いて反響を頂けるのは凄く嬉しいことです。
アイラヴミー「向き合って答えを出していきたい」葛藤の中で見出した個性:インタビュー
引用元:MusicVoice