消費されるオネエ枠でなぜIKKOだけが生き残ったのか? 唯一無二の“毒なし”スタイルの確立

引用元:オリコン
消費されるオネエ枠でなぜIKKOだけが生き残ったのか? 唯一無二の“毒なし”スタイルの確立

 一時期、大渋滞を起こしていた“オネエ枠”も落ち着き、今やマツコ・デラックスとIKKOが二大巨頭となった感がある。かつてテレビ業界で求められてきたオネエタレントの役割といえば、自己主張の強さや女王様的な発言。ようは他のタレントが担えない“毒”を男女の垣根なく放つことがオネエの醍醐味であるとされてきたわけだが、そのなかでもIKKOはブレることなく“毒なし”スタイルを貫いてきた。何事にも真摯に向き合う姿勢もさることながら、人を傷つけない“毒なし”の人柄が近年はますます評価されており、SNSでは「人間として魅力が溢れていて、見ているだけで笑顔になる」「気遣いもすごくできる」といった賞賛の声が上がっている。

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◆オネエ特有の“毒”が求められてきたなか、唯一無二の“毒なし”IKKO

 テレビ業界ではこれまでもさまざまなオネエたちが“重宝”されてきた。その元祖ともいえる、ファッション評論家・おすぎと映画評論家・ピーコの双子だろう。2人はそれぞれの専門分野ではもちろん、その歯に衣着せぬ発言でバラエティ番組でも長きにわたり活躍。評論家という職業も相まって、その強気で毒っ気のある発言がさまざまな場面で重用された。同様にピーター(池畑慎之介)や美川憲一なども俳優や歌手といった本職の一方で、オネエという特殊なポジションがタレントとしても転用されたケースと言えるだろう。

 バラエティ番組が花盛りとなった90年代以降は、はるな愛、ミッツ・マングローブ、KABA.ちゃん、クリス松村、假屋崎省吾らが“オネエ枠”として活躍。さらに次世代では“ユニセックスオネエ”として登場したGENKINGや、男性ハーフモデルのIVAN、メイクアップアーティストのピカ子(本田ヒカル)、茶畑の妖精ことトシ子ちゃん、“ネオネエンターテイナー”を自称する“ミュージシャンオネエ”HIDEKiSMなど、キャラクター系オネエが次々と登場し、百花繚乱の様相を呈した。

 テンション高めで自己主張が強く、共演者に対する厳しい発言も“異端の存在”として許されるオネエは、ときにご意見番的なポジションになることもある。何より他のタレントが担えないオネエ特有の“毒”はいい意味でのエッセンスとなり、バラエティ番組をはじめテレビのさまざまな場面で求められてきた。

 とは言え、もともと“オネエ枠”は芸能界のなかでも狭い席。希少な存在だからこそインパクトもあり、かつ存在自体が輝きもする。ところがテレビ業界がオネエを“便利”に活用していった結果、やがてオネエタレントもインフレ状態に。一方で近年は性的マイノリティへの理解が進むなか、バラエティ番組で面白おかしく取り上げていいのか? 多様なジェンダーがあるなかで“オネエ”とひとくくりにしていいのか? といった議論も視聴者を含めたテレビ内外で巻き起こっている。

 さんざん利用してきて勝手な話ではあるが、今やテレビ業界では“オネエ”の扱いは慎重なものとなりつつある。そうしたなか、地上波テレビで活躍する“オネエ”といえば、知性と毒の合わせ技で司会者としてのポジションを確固たるものとしたマツコ・デラックス、そして“毒”こそがオネエの面白さとされてきたなかで、毒のないスタイルを貫いてきたIKKOの二大巨頭となった。