『メメント・モリ』の作者は『100日後に死ぬワニ』をどう読んだのか?

引用元:BuzzFeed Japan
『メメント・モリ』の作者は『100日後に死ぬワニ』をどう読んだのか?

きくちゆうきさんがTwitterで毎日発表してきた漫画『100日後に死ぬワニ』が、3月20日でついに「100日目」を迎えた。

投稿は70万回以上リツイートされ、190万を超える「いいね」が集まるなど、多くの人がワニくんの最期を見届けた。なぜ「ワニ」はこれほどまでに人々を惹きつけるのか?

ベストセラー『メメント・モリ(死を想え)』の著者で、3月27日に最新刊『日々の一滴』を上梓する作家・写真家の藤原新也さんに、話題作を読み解いてもらった。【BuzzFeed Japan / 神庭亮介】 『メメント・モリ』の作者は『100日後に死ぬワニ』をどう読んだのか? 『100日後に死ぬワニ』。4月8日には連載をまとめた単行本が小学館から刊行される

人生を凝縮した100日間

『100日後に死ぬワニ』を読んで最初に何となく感じたのは、作者は大丈夫?ということだった。

まるで雲ぶとんの上に座っているような、明るい何でもない日常を生きるワニくんに鬱的なものを感じたんだね。100日後に自身の死をもってエンディング――なんて物騒なことをつい想像してしまった。

ワニくんが生きているような平凡でありふれた日常は、誰もが共有できるもの。その先に「死」が訪れる。それは平凡な日常とは真逆だけど、人生80年の中で本当は誰もが共有しているわけだね。100日間というのはそれを凝縮しただけ。

この100日でこれだけ話題になったのは、人々の普通の日常が新型コロナウイルスにさらされた危機感と、どこかでリンクしているんじゃないかな。 『メメント・モリ』の作者は『100日後に死ぬワニ』をどう読んだのか? 藤原新也

『メメント・モリ』から変わったこと

1980年代に私が『メメント・モリ(死を想え)』を書いたころと比べて、人間は本質的にそんなに変わっていないと思っている。しかし、時代環境は大きく変わった。

95年以降、ネット的なバーチャル世界が世の中を席巻しはじめたけど、9.11、3.11、そして今の新型コロナの流行と、まるで逆襲するかのようにむき出しの現実が次々と容赦なく襲いかかってきている。

ワニくんの世界の、9.11も地球温暖化も、コロナもなく、社会問題や政治問題もネグレクトして淡々と続く日常はリアリティーには欠けるが、時代の過酷とともに痛覚を停止させて生きる現代人の姿と重なるんだね。

つまり、「アンチリアル」にリアルを感じるんだ。