終戦75年の節目に朗報 戦時下描くNHK「太陽の子」に期待を

終戦75年の節目に朗報 戦時下描くNHK「太陽の子」に期待を

【大高宏雄の新「日本映画界」最前線】

 気になって仕方なかった。今年は終戦から75年が経つ。その節目の年に合わせた戦争映画が、邦画大手になかったからだ。なぜか。戦争映画に対する製作者や監督たちの熱意が下がっているのではないか。加えて、今ではぐらついているが、夏に東京オリンピック・パラリンピックも予定されている。興行的に不利になりかねない。そんなところだろうか。

 それが突然現れた。NHKが米国の会社と共同制作する「太陽の子」だ。ドラマと映画が作られる。太平洋戦争末期、海軍から新型爆弾の開発を命じられた大学の研究者の話だという。日本は被爆国だが、原子爆弾の開発を戦時中に行っていたことは知られている。そこに焦点を当てる。柳楽優弥、三浦春馬、有村架純らが主要な役を担う。

 中身を聞けば、伝統的に映画会社が作ってきた戦争映画の大作とは違うのがわかる。ただ大作ではなくても、映画版では重要な問題提起とともに、より広い客層の人たちを視野に入れたスケール感をもつ作品が望ましい。脇を固めるベテラン勢にも重厚さが欲しい。

 加えて、一言いいたい、米国の会社が制作に参加しているからといって、日本側の原爆開発の話が米国の原爆投下の免罪符になってはならない。原爆開発にかかわる研究者の苦悩は、戦争の本質に迫る普遍的な広がりをもつべきだろう。情緒に逃げてはならない。

 作・演出はNHKの黒崎博氏だ。最近ではドラマ「ひよっこ」が思い出される。スタジオのセット撮影に偏りがちな連続テレビ小説の枠を破り、外にカメラを持ち出して自由奔放な演出ぶりを発揮していた。つまり、常識にとらわれない演出家なのだ。だから今回もまた、常識の枠外に飛び出てくれるのではないか。そんな期待をもつのである。

(大高宏雄/映画ジャーナリスト)