ヤツはとんでもないものを…『カリオストロの城』にも影響を与えた、三島由紀夫の凄さ

引用元:マグミクス
ヤツはとんでもないものを…『カリオストロの城』にも影響を与えた、三島由紀夫の凄さ

 2020年3月20日(金)より、ドキュメンタリー映画『三島由紀夫VS東大全共闘 50年目の真実』が劇場公開されます。三島由紀夫(1925年~1970年)といえば、小説『仮面の告白』『金閣寺』などで知られる昭和を代表する文学者です。ノーベル文学賞の候補にもなりました。小説執筆だけでなく、評論家、政治活動家、俳優、ボディビルダーほか、多彩な顔を持ち、その天才ぶりは今も多くの人を魅了しています。

【画像】『カリオストロの城』『ウルトラセブン』に影響を与えた三島由紀夫の姿

 また、三島文学は、さまざまなカルチャーシーンに影響を与えています。宮崎駿監督の劇場デビュー作『ルパン三世 カリオストロの城』(1979年)も、そのひとつに挙げられます。『カリオストロの城』のラストシーン、ルパン三世に救われたクラリスに向かって、銭形警部は「ヤツはとんでもないものを盗んで行きました。あなたの心です」というセリフを口にします。

 いかつい顔の銭形警部がロマンチックな言葉を口にする微笑ましいエンディングですが、このシーンの元ネタとなっているのが三島由紀夫脚本、深作欣二監督の映画『黒蜥蜴』(1968年)です。美しいものをこよなく愛する女盗賊の黒蜥蜴(美輪明宏)が、名探偵・明智小五郎(木村功)と頭脳戦を繰り広げる江戸川乱歩原作のクライムサスペンスです。

 変装を得意とし、裏社会に生きる黒蜥蜴ですが、明智と丁々発止のやりとりを重ねるうちに、明智に対して恋心を抱くようになっていきます。女盗賊の乙女な一面に、観る者のハートもキュンキュンしてしまいます。しかし、クライマックスでは明智によって黒蜥蜴の悪事は砕かれてしまい、黒蜥蜴は隠していた毒薬を飲み干します。このシーンで黒蜥蜴と明智が最期に交わすセリフは、以下のとおりです。

黒蜥蜴「心の世界では、あなたが泥棒で、私が探偵だったわ。あなたはとっくに盗んでいた」
明智「僕にはわかったよ、君の心は本物の宝物、本物のダイヤだ、と」

 愛する男・明智に抱かれ、黒蜥蜴は息絶えることになります。三島由紀夫ならではの独特の美学に彩られた作品です。意外に感じられますが、三島由紀夫と宮崎監督は江戸川乱歩の世界を介してつながりがあったのです。