悲劇の朝ドラ「スカーレット」 白血病に倒れた長男・武志の結末は?

悲劇の朝ドラ「スカーレット」 白血病に倒れた長男・武志の結末は?

 NHKの連続テレビ小説「スカーレット」の放送が残り2週間を切った。多くの視聴者の注目は、俳優・伊藤健太郎(22)が演じる川原武志がどうなるのか……この一点に尽きるだろう。

 焼き物の里で知られる滋賀県の信楽が舞台のこのドラマ。女優・戸田恵梨香(31) が演じる主人公・川原喜美子は、女性陶芸家の草分け、神山清子さん(83)の壮絶な人生がモチーフとなっている。武志のモデルは、白血病のため31歳の若さで亡くなった神山さんの長男・賢一さん。

「このドラマは神山氏の人生に忠実に描かれており、波乱万丈の連続でした。とはいえ、やはり朝ドラですから、悲しくも決して暗くならない登場人物の明るいキャラ設定や、過酷な真実に対し微妙に表現を和らげた脚本と演出に救われた感じがします。平均視聴率は20%前後ですが、視聴者の評価は概ね高かったのではないでしょうか」(芸能ライター・弘世一紀氏)

 ドラマでは、自然釉(ゆう)の作品作りを目指す喜美子は夫の十代田八郎(松下洸平・33)の理解も得て、大金をかけて穴窯を製作するも、大量に使う薪代が家計を圧迫。八郎は作品製作を一時断念するように喜美子に進言するが、喜美子はそれに従わない。それが元で八郎は家を出て行くのだが、7回目の窯焚きで作品作りに成功した喜美子は女性陶芸家として名声を得る。経済的にも恵まれて安定の日々を送ることになる。

■ドラマのモデルになった実在の人物は…

 しかし、神山さんの人生はもっと苛烈だった。女性陶芸家として成功した神山さんは、夫の嫉妬によって暴力を振るわれるようになり、窯への立ち入りさえ禁止されてしまう。結局、夫は数年にわたり不倫関係にあった弟子の女性と家を出て行ってしまい、絶望した神山さんは自殺まで考えるようになった。そんな彼女を救ったのが息子の賢一さんだった。

<お母さん、お父さんのことは忘れて良い仕事をしてほしい>

 息子から言われた一言で神山さんは離婚を決意。そして、賢一さんが拾ってきた古代の自然釉の陶器の破片(ドラマでは、子供時代の喜美子が拾ってくる)により、自然釉に魅入られ、研究に没頭。しかし、全てのお金を研究につぎ込んでしまい、自然釉の作品作りに成功するまで、道に生えている草を食べるほど困窮したという。実は、ドラマ以上に母と息子の結びつきは強く、この親子の物語は05年公開の映画「火火」(高橋伴明監督)でも描かれている。

 それでは、白血病となった賢一氏はどのような最期を迎えたのか?

 29歳で慢性骨髄性白血病を発症し、余命2年半の宣告を受ける。その数カ月後、長男の知人らが「神山賢一君を救う会」を発足させ、ドナー探しと募金活動を開始するが、そのことを知った全国の白血病患者らが「募金を使う権利は私たちにもある」と主張したため、賢一さんは、他の白血病患者も救うべく、自ら骨髄バンク運動を開始した。しかし、ドナーは見つからず、「救う会」は7000万円の借金を抱えて解散。清子さんはその借金返済のため作品を作り続けた。

■ドナーは見つかるのか

 最終的に、ドナーの適合者ではなかったが、清子さんの妹(賢一さんの叔母)の骨髄を移植。それにより一時的に容態は回復するも、今度は急性となって白血病が再発し、発症から2年後の31歳の時に亡くなってしまった。問題はこうした現実をどこまでドラマに落とし込むかだろう。

「残り2週間弱でこの重たい事実をそのまま描くとは思えないし、あの健康的で若々しい伊藤が痩せ細っていく姿を見たいと思っている視聴者は多くない。事実を変えるとは思いませんが、重くなり過ぎず、どのように物語を終わらせるのか、最後までドキドキが止まらない。こういう展開も朝ドラとしてはかなり異例だと思います。できれば亡くなるところまでは描いて欲しくないというのが本音です」(前出・弘世一紀氏)

 武志を演じる伊藤は、18年に放送されたドラマ「今日から俺は!!」(日本テレビ系)で昭和のツッパリ役・伊藤(それまで健太郎だった芸名を伊藤健太郎に改名)で一躍、中高生に人気となった。スカーレットでもほぼ同時代の若者を演じているということもあり、中高年の女性の間まで人気が広がっている。「武志を殺さないで!」という気持ちは、世代を超えた女性ファンの願いではないだろうか。

 そんな伊藤は間もなく「東京ラブストーリー」(フジテレビの動画配信サービスFOD)の主人公・永尾完治役を演じる。こちらは昭和ではなく平成初期の恋愛ドラマの金字塔ともいえる作品のリメーク版だが、武志ロスになる恐れのある方にとっては、多少の救いにはなるかもしれない。