「我がKISS人生に一点の悔いなし」…ジーン・シモンズ単独インタビュー

引用元:スポーツ報知

 2021年7月の米ニューヨーク公演を最後にツアーからの引退を宣言している米4人組ロックバンド「KISS」のボーカル&ベースのジーン・シモンズ(70)がこのほど、スポーツ報知のインタビューに応じた。引退を決断するに至った理由や、バンドの今後、8日の仙台から始まった“最後の日本公演”(5都市5公演)への思いを聞いた。(高橋 誠司)

 本当にこれが最後の日本公演となるのか。火噴き、血吐きのパフォーマンスでKISSの地獄イメージを象徴してきた「ザ・デーモン」は、「そうだ」と言い切ると、不敵に笑い、帽子を脱いだ。「これを見てくれよ、全部地毛だ。俺は70歳だが、髪も力もあって健康だ。でも、72歳でやめるべきなんだ。手を顔のところまで上げてみな。まだ大丈夫だが、これが震えるようになってからでは遅い」

 金属製の鎧(よろい)と8インチ(20・32センチ)のドラゴンブーツに斧型ベース。ステージで身にまとう総重量は45ポンド(20・39キロ)に達する。「股間が大きくなったことも含めると、若い頃より重くなっているんだが、これで2時間のショーをやるわけだ。U2のボノなら30分と持たないだろう。すばらしい男だけどね。B・Bキングのように座ったままなら80代でも演奏できるが、KISSにそれは許されない。駄目だと思う瞬間がくる前に、チャンピオンのまま去るべきなんだ」。盟友ポール・スタンレー(67)ら他のメンバーとも話し合った末の結論は「今までで最も長いツアーにして、最後は地球上で最高のパーティーにしようぜ!」。今年1月から21年7月17日のニューヨーク公演まで、バンド史上最大のサヨナラツアーが始まった。

 子供の頃にイスラエルから米国へ渡り、1973年にKISSを結成した。「どんなバンドもできなかったことをやりたかった。既成のものはすべてぶち破る。KISSは人生を懸けたショーなんだ」。70年代後半のハードロックブームに乗り、当時は斬新だった悪魔メイクで世界中のロックキッズをとりこにした。「人間関係で良くない時期もあったけど、どの瞬間も最高だった。暗い雲は一切ない。我がKISS人生に一点の悔いなしだな」

 1977年に初来日公演を行って以来、今回が12回目の日本ツアー。通算公演回数も67回となる。子供の頃から歴史の本を読みあさるなど日本への思い入れは強い。「1868年に(明治維新で)できたばかりの新しい国で天然資源もないのに、アメリカとも肩を並べる大国になった。リスペクトしてるよ」。歌舞伎座で受けた衝撃は今も心に刻まれている。「白塗りのメイクはもちろん、悪魔的なものや嫉妬心など感情の出し方やとか共通点の多さに驚いたね」

 ツアー引退後も単発のライブなどでKISSの活動は継続する。そして、そのメイクを受け継ぐ次世代の候補も探しているという。「俺が死んだ後もKISSのこのメイクはきっと残るだろうね」。歌舞伎が世紀を超えて人々を魅了するように、KISSもロック史に長く語り継がれる。

 ◆最後の日本ツアー仙台からスタート

 最後の日本ツアーがこの日、ゼビオアリーナ仙台でスタートした。「お前たちは最高のものが欲しいんだろ? お前たちはそれを手に入れた。それは世界一熱いバンド、KISSだ!」とおなじみのフレーズが鳴り響くと、「デトロイト・ロック・シティ」からスタート。シモンズが「ウォー・マシーン」で火を噴き、スタンレーが「ラヴ・ガン」で空を飛ぶなど、20曲、約2時間のパフォーマンスで満員の約4000人の観客を魅了した。

 ◆経験踏まえ薬物警告

 日本の芸能界で薬物事件が増えているが、シモンズは自身の経験も踏まえ「ドラッグやアルコールに溺れる人間は自分を愛してくれる人も壊してるんだ。自分の体なんだから何をしてもいいというのはすごくわがままで自己中心的だ」と警告した。「速く走れたり、賢くなったり、アソコが大きくなったりするかなと思ってやったけど、そんなことは一切なかった。逆に金がかかるだけ。俺はユダヤ人だから、そんなに金のかかることは自分の哲学に反するんだ」と語った。

 ◆KISS(キッス) 1973年、米ニューヨークでジーン・シモンズ、ポール・スタンレー(ギター)、ピーター・クリス(ドラムス)、エース・フレーリー(ギター)の4人で結成。74年にデビューすると、派手なパフォーマンスで注目を集め、75年のアルバム「地獄の狂獣 キッス・ライヴ」でブレイク。83年から13年間はノーメイクで活動した。2004年からシモンズ、スタンレー、トミー・セイヤー(ギター)、エリック・シンガー(ドラムス)の現体制に。14年には米国の「ロックの殿堂」入りを果たす。代表曲は「デトロイト・ロック・シティ」「ラヴ・ガン」「ラヴィン・ユー・ベイビー」など。

 ◆KISS日本公演日程

 ▼11日 東京ドーム

 ▼14日 盛岡タカヤアリ  ーナ(盛岡市総合アリーナ)

 ▼17日 京セラドーム大阪

 ▼19日 ドルフィンズアリ  ーナ(愛知県体育館)

報知新聞社