NHK朝ドラ「スカーレット」佳境でも消えないスピンオフ週からの違和感

NHK朝ドラ「スカーレット」佳境でも消えないスピンオフ週からの違和感

【テレビが10倍面白くなるコラム】

 NHK連続テレビ小説「スカーレット」(総合あさ8時)は残り2週間、物語はクライマックスだ。これまではヒロイン川原喜美子(戸田恵梨香)の陶芸家としての波瀾万丈が描かれていたが、ここへきて息子・武志(伊藤健太郎)の闘病記にいきなり変わった。武志の限られた命と、母親の献身的な看病が話の軸だ。

「スカーレット」は女性陶芸家の草分けの神山清子がモデルだが、その長男の賢一も地元・信楽の窯業研究所や母親のもとで修業を重ね、金属のようなつやを持つ天目茶碗を制作した。

 ところが、29歳の時に骨髄性白血病と診断され、それから母と息子のドナー探しと高額な医療費のための募金活動が始まる。友人たちの協力もあって全国に知られるようになり、白血病患者を支援する運動に発展して、骨髄移植推進財団(現在の骨髄バンク)が設立された。ただ、賢一は自分のドナーは見つからず、32歳で死去。ドラマはいま、このエピソードを描いているわけだ。

 それにしても、それまでのストーリーと違和感がありすぎないか。2月最終週の「スペシャル・サニーデイ」も、喜美子の幼なじみ・大野信作(林遣都)が、実家のカフェ「SUNNY」の手伝いでドタバタするばかりで、主人公がほとんど登場しない異例の展開だった。

「ヒロイン・喜美子の話は、失敗続きの末についに古信楽の焼き物を完成させ、陶芸家としての名声を得た第18週(2月3~8日)で終わっているんです。死に物狂いで穴窯に薪を投入するシーンと赤い炎の映像が、このドラマの最大の見せ場だったというわけですよ。さて、残り1カ月半をどうするか。そうだ、イケメンを使ってスピンオフをつくっちゃおうというわけで、林遣都の大野信作、伊藤健太郎の武志を主人公にした“おまけ”をくっつけた。さらに、稲垣吾郎というサプライズも盛り込んだのだから、違和感があるのは当たり前ですよ」(テレビ番組構成作家)

 おかげで、一瞬、地上波視聴率20%を上回ったが、主演の戸田に華がなく、ドラマの舞台も後半はずっと焼き物の里ばかりと退屈で、あげくに涙の病気ものというのでは、朝から暗い気分になる。8作続いてきた朝ドラの全話平均視聴率20%台の記録も、「スカーレット」で途切れそうだ。

(コラムニスト・海原かみな)