中村壱太郎「新鮮な気持ちで見て」 明治座「三月花形歌舞伎」11年ぶり桜丸

引用元:スポーツ報知
中村壱太郎「新鮮な気持ちで見て」 明治座「三月花形歌舞伎」11年ぶり桜丸

 上方歌舞伎の名門・成駒家の御曹司である中村壱太郎(29)は明治座「三月花形歌舞伎」(16~26日)の「菅原伝授手習鑑 車引」で11年ぶりに桜丸を演じる。「僕は東京生まれですが、上方の匂いを感じさせたい」と意気込んでいる。

 上方独特の型で演じる桜丸を東京で披露するのは祖父の坂田藤十郎(88)以来、9年ぶりだ。「関西の歌舞伎役者が桜丸をやる時は隈(くま)取りの筋がなく、普通の白塗りで演じます。心に抱えている葛藤を柔らかい雰囲気で表現したいと思っています」。稽古では片岡秀太郎(78)から改めて教わり、本番に備えている。

 明治座の舞台は3年ぶり5度目。「演劇だけでなく、演歌歌手さんの公演も多い劇場ですよね。観客の反応が素直だという印象があります。歌舞伎座は普段から歌舞伎を見慣れている方が多いですが、明治座では面白い芝居で笑ったり、新鮮な気持ちで見てもらいたいですね」と呼びかけた。

 中村勘九郎(38)、中村七之助(36)が中心となり、若手が大役に挑戦する花形歌舞伎。和やかな雰囲気で切磋琢磨(せっさたくま)しながらも、「通し狂言 桜姫東文章」は、「黄金コンビ」と言われる大先輩の片岡仁左衛門(75)、坂東玉三郎(69)が指導役として稽古に参加。「とてつもなく濃厚な古典作品に挑む緊張感が漂っていています」と明かす。

 「近江のお兼」では男勝りでありながら、可憐(かれん)な女性を演じる。「娯楽性に富んだ舞踊なので、難しいことを考えずに『面白かった!』と喜んでもらえるはず」と胸を張る。新型コロナウイルスの感染防止のため開幕が11日に延期となったが、「本を読んだり、インプットの時間があって休養十分です」と前向きに捉えている。(有野 博幸)

 ◆中村 壱太郎(なかむら・かずたろう)1990年8月3日、東京都生まれ。29歳。慶大卒。屋号は成駒家。中村鴈治郎の長男で母は吾妻徳穂。祖父は坂田藤十郎、祖母は扇千景。91年林壱太郎で初お目見え。95年初代中村壱太郎を名乗り初舞台。14年吾妻徳陽として日本舞踊吾妻流7代目家元を襲名。16年に大ヒットしたアニメ映画「君の名は。」(新海誠監督)で三葉と四葉の姉妹が舞う巫女(みこ)の奉納舞を創作。 報知新聞社