“新型コロナ疲れ”で「やすらぎの刻」ファン増加…早くもロスが心配

“新型コロナ疲れ”で「やすらぎの刻」ファン増加…早くもロスが心配

 新型コロナウイルスによる突然の休校要請で子供とテレビを見ながら昼食を食べている。“ワイドショー疲れ”もあって、最近は「徹子の部屋」と、続いて放送される昼ドラ「やすらぎの刻(とき)~道(みち)」(ともにテレビ朝日系)を見ることが多い。

「やすらぎの刻~道」は、2017年に話題になった脚本家・倉本聰氏の「やすらぎの郷(さと)」の続編で、19年4月からスタートした。

 前作の「やすらぎの郷」では相応の年齢になった芸能関係者が入居する至れり尽くせりの老人ホーム「やすらぎの郷」で、往年のスターらが巻き起こす騒動や人間模様が中心だった。続編の「道」では現在のドラマに加え、施設の中心的存在である脚本家の菊村栄(石坂浩二・78)が最後の作品と密かに書き始めた脚本が現実にはありえない劇中劇として挿入され、現実と「道」パートを行ったり来たりするというという2部構成になっている。

 出演者は前作に引き続き豪華。「やすらぎの郷」の住人に、石坂のかつての妻・浅丘ルリ子(79)、加賀まりこ(76)、藤竜也(78)、ミッキー・カーチス(81)。さらに新しい入居者として、いしだあゆみ(71)、大空真弓(79)、橋爪功(78)、ジェリー藤尾(79)、松原智恵子(75)、笹野高史(71)、伊吹吾郎(74)らが登場している。なかでも、前作から出演し、「姫」の愛称で尊敬を集めていた八千草薫、山谷初男、石坂浩二の父親として幽霊役で出演していた梅宮辰夫が亡くなるなど、胸を痛めたファンもいて、ドラマと現実が交錯しているような感覚になった。

■ドラマと現実が交錯する感覚

 前作同様、「郷」の老人たちは次々に小さな事件を起こす。認知症、にせ札疑惑、老いらくの恋、過去の恋愛沙汰、薬物問題、前科のある人たちのその後、生前葬等々、芸能人でなくても身近にある問題で、見ている中高年には共感しやすいだろう。笹野演じる蒟蒻亭乙葉が入居者と句会を催し、「老人あるある」が反映された句が紹介されたり、施設でやっている体操を「やすらぎ体操第二」と称して出演者で体操している様子をYouTubeで動画公開したり、様々な遊び要素もあり、飽きさせない工夫が見られる。

 新しい顔ぶれの中では、いしだあゆみが、倉本聰脚本のドラマ「北の国から」で親子役で共演した吉岡秀隆(49)と、17年ぶりに再び親子役で共演する長尺シーンを見たが、ファンにとっては感動の名シーンだった。

 新しい「道」パートのほうは、山梨県の山間の村を舞台に、昭和から平成を生き抜いた、無名の夫婦の一代記を綴っている。昭和編の夫婦役に風間俊介(36)と清野菜名(25)、平成編は橋爪功と風吹ジュン(67)が演じている。主要人物以外の出演者は応募総数5000人ほどのオーディションから選ばれ、倉本聡のワークショップに参加して鍛えられたそうだ。ほかのドラマでは見かけないフレッシュな顔ぶれが集まっている。

 昭和初期から平成ということで、ありふれた田舎の貧しい生活と戦争前後の生活が描かれるあたりはNHK朝ドラなどの帯ドラマと情景は変わらないが、そこは倉本聰だ。清濁合わさった人間ドラマが流れていく。昭和から平成に移っていくと、古き良き日本の原風景である「道」がバブルを経て、徐々に限界集落への「道」へと変わっていくのだが、主人公の孫世代に希望の光はあるのかといったところが終盤の見どころだ。

■大下アナの「昼ドラ受け」も終わってしまう

 ドラマ主題歌を中島みゆきが担当しているところも注目だ。「慕情」「離郷の歌」「進化樹」に加え、「道」パートの平成編スタートに合わせ「観音橋」「終わり初物」の2曲を書き下ろしたという。その日の物語の内容によって5つの曲を使い分けているのも心憎い。

 心憎いといえば、ドラマの最後の予告後に、このあとに番組を引き継ぐ大下容子アナが、「昼ドラ受け」みたいに、やさしいひとことを添えるところもなかなかだ。大下アナの好感度は高く、明日も見ようかなと思ってしまうだろう。ただ、テレビ朝日としては、昼ドラは今期で終了とするとしているという。筆者と同様に“ロス”に陥る母親も多そうだ。

 現実の主人公の老いと、劇中劇の主人公の老いが重なり、1年を通して描かれたドラマ250話の結末はどうなるのか。残り1カ月を切り、毎日の予告では意外な展開をにおわしているが、人間関係の悲喜劇の終着点を静かに見守りたいと思う。

(コラムニスト・君野那波)

▽テレビ批評家・ライター。1967年福岡県生まれ。大学在学中に新聞発行に関わるも、マスコミには就職せず東京で日本語教師に。結婚後、テレビの中やネット上に巻き起こることを静かに眺めながら、たま~につぶやき、子育てや主婦業に勤しむ。趣味は動物園・水族館。岐阜県在住。