野田クリスタル「無観客」でR-1王者 追い風になった“もう一つの戦略”

野田クリスタル「無観客」でR-1王者 追い風になった“もう一つの戦略”

 ”ひとり芸日本一”を決める「R-1ぐらんぷり2020」(フジテレビ系)が8日に生放送され、エントリー数2532人の中から、お笑いコンビ・マヂカルラブリーの野田クリスタル(33)が優勝した。

 決勝戦は新型コロナウイルス対策により無観客。スタジオはスタッフの笑い声が響くのみ。予選を勝ち抜いた11人+敗者復活戦の勝者1人の合計12人によって、まずは4人ずつ3つのブロックに分かれてファーストステージ、その勝者である3人=野田クリスタル、すゑひろがりず南條(37)、大谷健太(34)がファイナルステージに進んだ。

 野田はファーストステージは、”鉄のような太ももを持ったキャラクターが登場する”「桃鉄」のパロディーゲームのネタ、同じくファイナルステージでは”モンモンとするストッキングをはいた姉さん”が登場する「モンスターストライク」のネタで挑んだ。いずれも大型モニターを用いた「ゲーム実況ネタ」だった。

■「ネットの投票が強め」

 採点はdボタンを用いた視聴者投票と、ツイッター投票、さらに桂文枝ら6人の審査員の採点を合計して行われたが、野田は、ファーストステージ、ファイナルステージとも「dボタン投票」「ツイッター投票」で他の候補者より大差をつけていた。

 優勝後の会見で勝因を問われた野田は、「リアルに言うと、ネットの投票が強めに入ったからかなと思います。ネタの内容がゲームだったんで、ネットの方から支持を得たかな」と答えた。また無観客については「僕は無観客のほうがやりやすいのかなと思います。完全なる無観客の状態の番組『あらびき団』でやることもあったので、自分にとっては有利だなと」と分析した。

 お笑いコンビ・ダウンタウンの松本人志(56)は今回の無観客での開催について、前日にツイッターで「審査員も大変だ。センスが問われるからね。しびれるね」と投稿。しかしながらお笑い評論家のラリー遠田氏は「芸人は、お客が少ないライブ会場やネタ見せなど、観客のいない場所でネタをやることには慣れているので、思っているほど無観客を苦にはしていないと思う」としてこう語る。

「『M-1』『キングオブコント』『R-1』の”トリプルファイナリスト”である野田クリスタルの実力は折り紙付きです。強い世界観を持ったネタをする人ですから、本人がコメントしたように、むしろ無観客は望むところだったのでは」

■テレビ向きのネタ選び

 さらにネタのチョイスもズバリだったという。

「確かに『ゲーム実況』のネタは、ネット投票と親和性が高いですが、もうひとつ利点がありました。こうしたモニターを使うネタは、演者とモニターが離れているため、意外と観客をネタの世界観に引き込むことが難しい。しかし今回は、モニター画面が何度もアップになり、それがうまくいっていた。つまり非常にテレビ向きのネタだったわけです」(遠田氏)

 逆に会場に観客が入っていたとしたら、往々にして勢いまかせのネタのほうがウケるので、審査員もそれを加味して、また違った結果になっていた可能性もあるという。

 本人も語っている通り、今回の優勝は、無観客を逆手にとった「戦略勝ち」といえそうだ。