新型コロナウイルスに旅番組や散歩番組スタッフが戦々恐々

新型コロナウイルスに旅番組や散歩番組スタッフが戦々恐々

【テレビが10倍面白くなるコラム】

 ある旅番組のディレクターは、プロデューサー(P)から「インフルエンザならいいが、新型コロナウイルスにだけは感染するな」と厳命されていると話す。旅番組や散歩番組のスタッフから感染者が出たら、その後の放送がたちまち休止になってしまうからだ。

「新型ウイルス騒動の前に収録は済んでいるのですが、出演者はもちろん、スタッフが感染したら、『ウイルスをまき散らしていた』とSNSで大炎上になります。ロケ先からも、濃厚接触者とみられかねないので、放送を見合わせてくれと言ってくるでしょう。だからPは、ネットで1箱何万円なんて吹っかけてるマスクを自腹で調達して、みんなに配ってました」(ディレクター)

 山奥の「ポツンと一軒家」(テレビ朝日系)にウイルスを持ち込むとしたら、取材スタッフしかいない。テレビ東京系の「出川哲朗の充電させてもらえませんか?」は、出川が電動バイクで旅をして、人々との握手やハグが売り物だが、高野学総合編成局長は「そこは出川さんと話していけたらと思っています」と、触れ合いは“自粛”してもらうという。

 学校が一斉休校になっている時に、「家族に乾杯」(NHK)で鶴瓶が道行く小学生に、「家に行ってもええかあ」なんて話しかけていたら、無神経だと非難されるだろう。

■ロケ番組も次々とストップ

 そもそも、旅番組や散歩番組は「不要不急の外出」の最たるものだから、こんな時に、温泉につかって「気持ちいい~」とか、飲食店で「おいしい!」なんてはしゃぐのは、それだけでヒンシュクを買いそうなのに、そのうえ番組関係者から感染者を出したら、もう放送どころではあるまい。

 すでに多くのロケ番組がストップしている。

「地元の自治体や観光協会、協力の鉄道会社や航空会社から、『今はやめときましょう』と言われてしまいます。出演のお笑いの芸人さんやタレントさんも、混雑している店などには行きたがりません。観光施設もほとんどが休んでいて、番組が作れなくなっています」(ディレクター)

 この影響は5月ごろに出そうだ。ロケ収録は放送日のだいたい2~3カ月前に行うためで、ゴールデンウイークあたりから再放送が増えるだろうという。

(コラムニスト・海原かみな)