【スカーレット】最終週「炎は消えない」振り返り

引用元:オリコン
【スカーレット】最終週「炎は消えない」振り返り

 NHKで半年間放送された連続テレビ小説『スカーレット』の最終週「炎は消えない」(第145回~第150回:3月23日~28日)は、出演者のコメントとともに振り返る。

【写真】『スカーレット』最終週の名場面

■武志の水の波紋の大皿が完成

 武志(伊藤健太郎)が器の中で生きている水を表現しようと取り組んでいた作品が完成。その大皿から釉薬の層にヒビが入る音が聞こえてくる。「焼き上がって完成したと思ったのに」と言う武志に、喜美子(戸田恵梨香)は「終わってなかったな。生きてるで」と励ますように言う。

 「物を作るということは『生』ということだと思うんです。第18週で、喜美子が初めて完成させた自然釉の作品『うずくまる』を”取り上げた”とき、私自身は出産を経験したことがないのに、実際に子どもを産んだかのような感動を覚えたんです。物を作り上げるということは、誕生させる、生かす、自分の魂を吹き込む、ということなんだなと感じました。そしてこの『スカーレット』という作品のテーマが『生と死』なんだなと気づきました」(戸田)。

■八郎の卵焼きと武志の本音

 治療の副作用で食べ物の味がわからなくなってしまった武志。八郎(松下洸平)が作ってくれた卵焼きの味もわからず、ついに武志は「こんなんなる前に作ってくれたらよかった」と、初めて父につらい気持ちをぶつける。さらに、同じ病気で亡くなった高校生の智也(久保田直樹)からの手紙を開いて、「おれは終わりたくない、生きていたい」と喜美子の前で涙を流した。

 「『生きていたい』と涙を流す武志がとにかくいたたまれなくて、触れてあげることしかできなくて…。かけることばも見つけられませんでした」(戸田)。

 「武志の中で、バケツの中にピンピンにためていた水が全部あふれてしまった感じがしました。役の上でもプライベートでも味わったことのないような、いろいろな思いがのしかかってくるような感覚でした」(伊藤)。

 「ここまでくると本当に積み上げてきたものを信じるしかないな、という気持ちでした。武志と過ごした時間、八郎として生きてきた時間を信じてせりふ通りに演じていくしかないのですが、それをしっかりやれば届くと信じてやりました」(松下)

■「みんなの陶芸展」&みんなで琵琶湖へ

 信作(林遣都)の部下たちの発案で、「みんなの陶芸展」を開くことに。喜美子は陶芸教室の生徒とともに、自らも出品しようと決める。武志も作品を作りはじめる。そして、いよいよ「みんなの陶芸展」。照子(大島優子)の家族をはじめ、ちや子(水野美紀)、草間(佐藤隆太)、ジョージ富士川(西川貴教)がやってきた。ジョージが呼びかけ、大きな紙に「今日が私の一日なら」をそれぞれに書くことになる。「いつもと変わらない一日は特別な一日」と書いた武志の思いを知り、喜美子は武志と過ごす日常をかみしめる。

 「喜美子はこの陶芸展をきっかけに、思う存分生きていることを楽しもう、しんどいと思うだけではなく、生きている喜びをちゃんと感じようと思ったと思います」(戸田)

 喜美子は、武志とみんなで琵琶湖へいくことを思いつく。照子、信作、直子(桜庭ななみ)、百合子(福田麻由子)、石井真奈(松田るか)、永山大輔(七瀬公)、宝田学(大江晋平)も集まってくれた。

 「こんなにみんなが集まってくれるなんて幸せだなと思いました。これから武志に起こることを考えると切なくなるんですけど、現場としては楽しかったです。それはほかのシーンでもそうなんですよ」(伊藤)

■「ギュウしてええ?」

 武志は闘病しつつ作陶を続け、側で喜美子も陶芸に励む日々。ある日、喜美子は武志に「ギュウしてええ?」と言って、思い切り抱きしめる。武志は喜美子に抱きしめられたまま「幸せや」とつぶやいた。

 「健太郎君が『武志史上、一番声出てる。一番元気』と言っていて、それがすごくうれしくって。健太郎君って意図せず、本当に素直なことばをぽろぽろと出してくるんですよ」(戸田)

 「お母ちゃんとギュウする武志の最後のシーンも、放送を見るとめちゃくちゃ切ないシーンになっていると思うのですが、やっている本人としてはお母ちゃんとじゃれ合うのが本当に楽しくて。逆にあのシーンでしんみりしても変な感じですよね」(伊藤)

 「本当に息子でしかなくて、『こんなにいとおしい子はほかにいない』と思いました。その思いが強すぎて、両足でホールドしてから結局、息子に抱っこしてもらうというところまでやりました(笑)。武志の病気のことを考えたら絶対やってはいけないことなので、ギャグのひとつとしてやったのですが、気持ちは表現しました。放送では武志に抱っこされた部分はカットしてくれていたらいいなと思っています(笑)」(戸田)

■陶芸家として作品を作り続ける喜美子と再出発を決めた八郎

 2年後、26歳の誕生日を迎える前に武志は旅立つ。医師の大崎(稲垣吾郎)が武志の作品を見に工房にやってきて、自らも作品作りに挑戦する。そして八郎が訪ねてきて、長崎で陶芸家として再出発することを告げる。

 「八郎と喜美子に関しては、もう距離の問題ではないんですよ、きっと。ここにいようが、遠くに離れていようが、二人にとって距離は問題ではなく、お互いの存在そのものがかけがえのないものなんだと思います。だから台本を読んだとき、武志の死を無駄にしないためにも長崎でもう一度挑戦しようという八郎の選択は間違っていないと思いました。のちのち一緒に暮らすことになるのか、そういった未来のことに関しては、ご覧になってくださった皆さん一人一人の想像の中にあると思いますし、それがドラマの楽しいところだと思います」(松下)

 ラストは、喜美子が一人、穴窯の燃えさかる炎に薪をくべ、変わらずに陶芸に励む姿だった。

 「喜美子だけではなく、人間というものは不完全である、その不完全さをどれだけ楽しむことができるか、それゆえに生き物は愛するべきものなのだということを、私自身が感じたように、皆さんにも感じてもらえていたらうれしく思います。そしてそんな登場人物たちを最後まで笑って泣いて支えていただきありがとうございました。『スカーレット』が、10年後も20年後も皆さんの心の中で生き続けるような、そんな作品になっていればいいなと思います。私にとってはこの作品が自分の基盤になりそうな気がしています」(戸田)