「まて~ぃ ルパーン!」銭形警部役・納谷悟朗氏の命日。繰り返し説いた演技の心構え

引用元:マグミクス
「まて~ぃ ルパーン!」銭形警部役・納谷悟朗氏の命日。繰り返し説いた演技の心構え

 3月5日は2013年に83歳で亡くなった、俳優の納谷悟朗氏の命日です。アニメでは「宇宙戦艦ヤマト」シリーズの沖田艦長や「ルパン三世」シリーズの銭形警部、映画では長くジョン・ウェインの吹替を務め、お茶の間に親しまれていました。幼いころから納谷氏の声に親しんできたライターの早川清一朗さんが、追悼の想いを捧げます。

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 もう10年ほど前になるでしょうか。ある編集者の方から、納谷悟朗氏のインタビューをやるかもしれないので、「起こし」をしてくれないかと頼まれました。ライター用語で「起こし」とは、インタビュー音声を文字にすることを指します。いったん文字にしないと、人のしゃべった言葉を読める文章として作りこむのはかなり難しいのです。

 まだ経験が浅いライターだった筆者にとって、起こしは重要な仕事でした。お金になるのもそうですが、インタビュアーの質問の仕方や進行を学ぶ絶好の機会だったのです。

 特に、納谷悟朗氏と言えば、筆者が子供のころから楽しんで観ていた『宇宙戦艦ヤマト』の沖田艦長や『ルパン三世』の銭形警部、『風の谷のナウシカ』のユパといった、有名なキャラクターを演じていた超ベテランです。「声優」という仕事が誕生した黎明期から活動しており、特撮では『仮面ライダー』の大首領、昔の洋画を見れば大抵どれかの役を演じているなど、芸の幅も大変に広く、大御所と呼べる方のひとりです。

 きっとすごい話が聞けるだろうと楽しみにしていたのですが、しばらくして「インタビューは中止になったわ」と連絡が入りました。「なんでだめだったんですか?」と尋ねたところ、返ってきたのは「……もう大分体が悪いそうなんや」という、できれば聞きたくない答えでした。

 いつか回復したら、また何か機会があるかもしれない。直接インタビューすることだってできるかもしれない。そんなはかない願いは、納谷氏の他界により永遠に叶わないものとなりました。この場を借りて、ご冥福をお祈り申し上げます。