国内版と海外版のカバーアートはこんなにも違っていた―その理由も考えてみる【特集】

引用元:Game Spark
国内版と海外版のカバーアートはこんなにも違っていた―その理由も考えてみる【特集】

最近、パッケージソフトを買ってないなぁ……と感じることが多くなりました。筆者の場合、欲しいゲームは、パッケージソフトに限定特典が付属していない限りダウンロードで購入しています。場所も取らないし、購入の手間もかかりませんから。

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一方でパッケージソフトにはパッケージソフトの魅力があると思います。手元に残る安心感のほかにも、ゲーム内容が記されたパッケージの裏を読むとワクワクしますよね。そして一番はパッケージソフトの顔であるカバーアートではないでしょうか。

そんなカバーアートですが、国内版と海外版で全然違うデザインをしているのはご存知ですか?今回は、それらのカバーアートを紹介しつつ、その違いについても考えてみます。

『幻想水滸伝』(英題:Suikoden)
発売/開発元:コナミ(現・コナミデジタルエンタテインメント) ジャンル:RPG 機種:PS/SS/Windows95/フィーチャーフォン

コナミが贈るJRPGの名作『幻想水滸伝』は、中世ヨーロッパとアジアの文化をごちゃまぜにした独自の世界観が魅力的な作品です。カバーアートでもそれが見て取れますね。

ただ、海外版のカバーアートの強烈さは超有名。海外版ではすごいことになっている『ロックマン』『ストリートファイターII』『ICO』と同列で語られることが多く、「いやいや知っているし」と思ったゲーマーも多いのではないでしょうか。

というかGame*Sparkでも12年前に記事で取り上げていました。連載ネタだったし、当時読者だった筆者も楽しみにして読んでたのになぜ終わったんだ……。

話が脱線してしまいましたが、本作の海外版がこちら。

ローカライズ担当「今度アジアンテイストの中世ヨーロッパ風RPGが出るから描いてよ!」
アーティスト「アジアンテイストのヨーロッパ……トルコあたりかな……」

そうして最小限の情報をもとに苦し紛れに描かれたのがこのカバーアートなのではないかと……いや、そんなわけないんですけど。

冗談はさておき、カバーアートには、主人公と思わしき男性や水辺の本拠地などの『幻想水滸伝』の要素はしっかりおさえているので、そんないい加減なやり取りで作られたものではないと思います。

もしかすると海外向けて本作独自の世界観を発信するとしたら……と議論を重ねた結果、このようなデザインになってしまったのかもしれません……が、事実はわかりません。

ドラゴンに乗った鉄雄、お前は一体誰なんだ……。

『鬼武者 無頼伝』(英題:Onimusha: Blade Warriors)
発売/開発元:カプコン ジャンル:対戦型アクション 機種:PS2

本作は『鬼武者』シリーズのスピンオフとして発売されたマルチ対戦型格闘アクション。『スマブラ』のように4人でプレイできるのが特徴です。

カバーアートには、金城武氏がモデルの明智左馬介と、松田優作氏がモデルの柳生十兵衛のシルエットが描かれています。戦わないはずの二人が激突しているところをみれば、本作のジャンルが対戦格闘アクションであるのがわかります。

あえてシルエットにすることで、ゲーム内容に対する期待感を煽りますね。

さて海外版はというと……

「左馬介と十兵衛が戦うゲームだよ」とぶっちゃけている感がすごいです。

二人のキャラクターは、ゲーム中の画像を何も加工せずに切り取ってきた感があります。それに二人は鍔迫り合いをしているはずなのにお互い目線を合わせていない……。いや、相手の刀を見ていると解釈すれば、むしろこちらのほうがリアルか?

ただ、シリーズをプレイしている人からすれば、スピンオフといえど馴染みのキャラクターが確実に登場する安心感があるのかもしれません。

『がんばれ森川君2号』(英題:Pet in TV)
発売/開発元:ソニー・コンピュータエンタテインメント(現・ソニー・インタラクティブエンタテインメント) ジャンル:育成シミュレーション 機種:PS

初代PlayStationの代表作として挙げられる人工知能生物飼育ゲーム『がんばれ森川君2号』のカバーアートには、クレイアニメのような背景に、おもちゃ感がある主人公のPiTが描かれています。

サブタイトルをみれば主人公を育成するゲームだというのがわかりますし、可愛らしいカバーアートを見るだけで主人公に愛着が湧いてきます。

これならパッケージを手にとって裏面のゲーム概要を読んでみたくなりますね。

それでは海外版はどんなものになっているのでしょうか。

どことなくオシャレな雰囲気が変わってしまいました。

「これがこのゲームの主人公だ!」と言わんばかりに、様々なPiTが描かれており、プレイヤー次第でPitの外見が変わることが見て取れますね。さらに海外版のタイトル『Pet in TV』と、そのサブタイトル「Your Best Friend」を読めば、このゲームはPiTを育てられるゲームだと理解できますね。

国内版がPiTを取り巻く世界を描くことで作品の魅力を伝えているのに対し、海外版ではPiTそのものの可愛さを全面に出しています。

どちらも魅力的なカバーアートだと思うので、これは甲乙つけがたいですね。

<cms-pagelink data-text=”『アーマード・コア』『龍が如く』シリーズ作品のカバーアートもこんなに違う!” data-page=”2” data-class=”center”></cms-pagelink>

『アーマード・コア マスターオブアリーナ(Armored Core : Master of Arena)』
発売/開発元:フロム・ソフトウェア ジャンル:ロボットアクション 機種:PS

人々が闘争を求めると新作がリリースされると言い伝えがあるフロム・ソフトウェアのロボットアクション『アーマード・コア』シリーズの『アーマード・コア マスターオブアリーナ』のカバーアートを紹介。

国内版は、基本的にどのシリーズ作品も主役であるアーマード・コアをスタイリッシュに描いています。特に本作のカバーアートは、アーマード・コアの輪郭をぼかすことで目の前に迫ってくるスピード感を演出しており、これだけで「ロボットがハイスピードで戦うゲーム」だとわかります。

シンプルゆえにゲームの内容がわかりやすいですね。

それでは海外版はというと……

溢れ出すトランスフォーマー感……。

カバーアートには、2体のアーマード・コアが激しい戦闘を繰り広げており、『アーマード・コア』の世界観は維持されたままなのですが、アメコミよろしくの「2 Disc Game」のビックリ吹き出しのせいでシリアスな雰囲気は台無しになり、まるで『メタルウルフカオス』のようなファンキーさを醸し出しています。

背景が描かれていることに関しては『鬼武者 無頼伝』でも感じましたが、海外版は、シルエットやシンボル的な表現は避けて直接的に描かれていることが多い印象を受けます。これはお国柄の違いなのでしょうか。

ちなみにタイトルロゴも国内版と異なりますが、これは第一作目『アーマード・コア』の海外版から継承しているようです。

『龍が如く4 伝説を継ぐもの』(英題:Yakuza 4)
発売/開発元:セガ(現・セガゲームス) ジャンル:アクション・アドベンチャー 機種:PS3/PS4

『龍が如く7 光と闇の行方』が各メディアで絶賛されていることで記憶に新しい『龍が如く』シリーズ。そのナンバリングタイトルの4作目にあたる『龍が如く4 伝説を継ぐもの』のカバーアートは、4人の主人公とキーパーソンにあたるキャラクターが一同に介したものとなっています。

PS4版でリファインされたカバーアートは、芸能界を引退した成宮寛貴さん演じる谷村正義の顔モデルが変更されたことに少々寂しさはありますが、桐生ちゃんをはじめとした人気キャラクターと豪華俳優陣がババーンと描かれていてどこか安心感があります。

さて、海外版はどうなっているのかというと……

乗り物奪ってカーチェイスするタイプのクライムアクションゲームだ。コレ。

国内版と雰囲気がガラリと変わり、一般市民に犯罪行為ができるオープンワールド系クライムアクションゲームのようなカバーアートになっています。誰かに「これは4人のヤクザが銀行強盗を計画していくゲームだよ」と言われたら信じてしまいそうです。それは言い過ぎにしても乗り物を奪ってカーチェイスができそうでもあります。

少し内容を勘違いしてしまいそうですが、本作に登場する実在の豪華俳優陣は日本国内ほど海外では認知されていないかもしれませんし、このカバーアートの方が手に取りやすいのかもしれません。筆者も海外版の方がかっこいいと思います。

『塊魂TRIBUTE』(英題:Katamari Forever)
発売/開発元:SCE/元気 ジャンル:アクション 機種:PS3

あらゆるモノを巻き込んで塊を大きくしていくアクションゲーム『塊魂』シリーズ作品『塊魂TRIBUTE』のカバーアートは、まさにシリーズの集大成として相応しい重量感ある塊が描かれています。

塊をフィーチャーしたカバーアートになっていますが、富士山の隣に王様のシルエットもしっかりと描写しているのでお馴染みのキャラクターが登場すると示唆していますし、白い帯には、初見プレイの人に向けてゲームのルールをイラストでわかりやすく説明しています。

「シリーズの集大成だけれど、初心者でも安心してプレイできるよ」というメッセージが読み取れますね。

それでは本作の海外版はこちら。

ずいぶんと変わっちゃいました。

キュートなキャラクターが地球を覆う形で塊になっていて、それを王子が転がしている様子が描かれています。さらに国内版では、シルエットで描かれていた王様も一番目立つところにいますし、シリーズの集大成といった印象を受けますね。

ただ、初見プレイの人からするといまいちゲーム内容が掴めないと思いますが、カバーアートの構図は国内版よりシンプルで見やすいので、ついつい気になってパッケージ裏面のゲーム概要を読んでしまいそうです。

『立体忍者活劇 天誅(Tenchu: Stealth Assassins)』
発売/開発元:ソニー・ミュージックエンタテインメント/アクワイア ジャンル:ステルスアクション 機種:PS

忍者系ステルスアクションの金字塔『立体忍者活劇 天誅』の国内版カバーアートには、主人公の力丸とヒロインの彩女が描かれています。非常にシンプルな構図ですが、忍者が主人公のゲームというのは手に取る前からわかります。

このカバーアートだけではゲームジャンルはわからないと思いますが、タイトルの「立体忍者活劇」から3Dゲームであることは推理できるはずです。

それでは早速本作の海外版をご紹介。

これは力丸なのか……このいかつい顔はまるで洋ゲーに登場する敵キャラクターのようではありませんか!『HITMAN』とかに出てきてエージェント47にあっけなく殺されそう!

力丸のチャームポイントである白い髪は、タイトルが記された黒帯を覆い被せてカット。結果、上下の黒帯がニンジャマスクのような役割を果たし、力丸の外見がより忍者っぽくなっています。また、「Stealth Assassins」というサブタイトルも相まって、忍者のステルスアクションゲームというのがひと目でわかるようになりました。

いかにも洋ゲーチックなカバーアートですが、海外の人にはこちらのほうが手に取りやすいのかもしれませんね。

<cms-pagelink data-text=”PS4版『ワンダと巨像』にも微妙な違いが?” data-page=”3” data-class=”center”></cms-pagelink>

『JUDGE EYES:死神の遺言(Judgment)』
発売/開発元:セガゲームス/龍が如くスタジオ ジャンル:リーガルサスペンスアクション 機種:PS4

あのキムタクが操作できることで話題を呼び、同作の羽村京平役として登場したピエール瀧氏の逮捕騒動によって羽村の顔と音声が変更された『JUDGE EYES:死神の遺言』。色々な意味で注目された龍が如くスタジオによる新機軸的な作品です。

余談ですが、新価格版のカバーアートでは、ピエール瀧氏の件があって描かれていた俳優の人数が4人から3人に。羽村は省かれてしまいました。また、背景も白から黒に変更されています。

さて、海外版のカバーアートはどうなっているのでしょうか。

キムタクと割れたキムタクしか描かれていません。

国内版はキムタクと俳優陣、そして何らかの事件の犯人と思われる人間が描写されているのに対して、海外版ではキムタクしか描かれていませんが、ガラスの破片ように割れてしまったキムタクを描写することで何らかの事件を示唆しています。

海外版は、『龍が如く4 伝説を継ぐもの』と同様に、俳優陣の認知度が日本国内と海外で差があるために、主人公だけを描いているのかもしれません。

『SEKIRO: SHADOWS DIE TWICE』
発売/開発元:フロム・ソフトウェア+アクティビジョン ジャンル:アクション・アドベンチャー 機種:PS4/Xbox One/PC

「The Game Awards 2019」のGame Of The Yearを獲得した2019年を代表する『SEKIRO: SHADOWS DIE TWICE』のカバーアートは、「めちゃくちゃカッコいい……」の一言に尽きます。

満身創痍でありながらも前へ突き進もうとする主人公のうしろには、地面に突き刺さった刀や敵の侵入を防ぐ柵、重厚感漂う城が描かれており、彼がこれまで苦難の道を歩んできたのがわかります。そして、強い目で正面を見ているところから、その道はこれからも続くのでしょう。

このカバーアートを見れば難易度が高いゲームであることがわかります。

それでは海外版はというと……

どことなく『ソウル』シリーズのような雰囲気を醸し出していますね。

国内版はキャラクターの表情や雰囲気がメインに描かれていましたが、海外版ではキャラクターの姿がメインになっています。特に忍義手の火吹き筒を繰り出そうとしている姿を見れば、「この左腕を駆使して戦う剣戟アクションなのだな」と理解できるのではないでしょうか。

また本作は、屋根の上をはじめとした高所に行けるようになっています。主人公が屋根の上で戦っているのは、ゲームでも高所まで行けることを示唆しているのではないでしょうか。

国内版は、ゲームプレイを行う上で「何を体験できるのか」を表現していて、海外版は「何が出来るのか」を表現しているのかもしれませんね。

PS4版『ワンダと巨像(Shadow of the Colossus)』
発売/開発元:SIE/Bluepoint Games ジャンル:アクション・アドベンチャー 機種:PS4

上田文人氏が手掛けるアクション・アドベンチャー『ワンダと巨像』は、2005年にPS2向けに発売されたオリジナル版も国内と海外でカバーアートが違いました。国内版では巨像の後ろ姿が描かれていたのですが、海外版では正面の姿になっています。

そして2018年にPS4向けに発売されたリメイク版では、カバーアートを一新。中央には巨像の背中に対峙する主人公の姿、そして空を突くような光の柱が描かれており、背景には物語のスタート地点である古城がそびえ立っています。

これだけの情報ですが、本作の世界観を凝縮しているようにも思えますね。

そして海外版はというと……

実はほとんど変わっていません。

でも、よく見比べてみてください。海外版のほうが全体的に暗くなっていませんか?

青空もどんよりとした感じですし、古城のディティールも暗くてわかりません。特に注目したいのが光の柱です。巨像の背中を照らしていた光の強さも弱くなったことで、むしろ大きな巨像が光を遮って辺りを暗くしているように見えなくもありません。また海外タイトルの『Shadow of the Colossus』の「O」の文字が邪魔をして巨像の脇から光の柱が見えなくなったのも、それを手伝っています。

ここから考えるに海外版は、より巨像にフォーカスしているカバーアートになっているのではないでしょうか。全体的に暗くなったことでこれから主人公が戦う巨像の巨大感、「本当にこんな相手と戦えるのだろうか」という不安が増しています。また、国内版では途中で切れていた巨像の武器が、海外版ではしっかり描かれているのも、そう考える一因です。

さて、古今東西のカバーアートを紹介しましたが、いかがでしたか?筆者の考察はあくまで個人的な見解にすぎないため本当かどうかはわかりません。ただ、国内版と海外版を見比べて「なぜこうなったのか?」と考察するのは非常に楽しかったです。

読者の皆さんも、国内版と海外版で異なるカバーアートを探し出し、見比べて、その違いについて考察してみてはいかがでしょうか? Game*Spark 真ゲマ