ハード戦線のさなかに登場! アーケードから移植が早かったプレステ『鉄拳』の秘策

引用元:マグミクス
ハード戦線のさなかに登場! アーケードから移植が早かったプレステ『鉄拳』の秘策

 1995年3月31日、ナムコ(現:バンダイナムコエンターテインメント)からプレイステーション用対戦格闘ゲーム『鉄拳』が発売されました。当時大人気だったセガサターンの『バーチャファイター』に対抗し得る対戦格闘ゲームが発売されたことにより、プレイステーション(以下、PS)はサターンと互角に戦える状況となりました。PSがゲーム業界を席巻するための礎となった『鉄拳』について、ライターの早川清一朗さんが語ります。

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 1990年代の中ごろ、対戦格闘ゲームにハマっていたゲーマーはとてつもなく多かったと思います。街中には今とは比べ物にならないほどたくさんのゲームセンターが存在し、店の中には対戦台がずらりと並べられ、その周りには多くの若者が順番待ちをしながら人のプレイを盗もうと画面に見入っていました。今、「eスポーツ」と呼ばれている競技の芽は、あの頃のゲームセンターで培われたものなのだと確信を持っています

 1991年に発売された『ストリートファイターII』の歴史的大ヒットに続けとばかりにさまざまなゲームメーカーから対戦格闘ゲームが発売され、多くのゲームセンターが先を争うようにして購入していました。対戦台は短時間でプレイが終わるために収益性が良く、ゲームセンターにとっては金が成る木のような存在だったのです。

 アーケード版『鉄拳』がリリースされたのは、1994年の12月。ちょうど11月に『バーチャファイター2』がゲームセンターに登場し、まさに日本のゲームシーンを席巻していた時期の登場だったのです。正直、このタイミングで新作をぶつけるのは相当な覚悟が必要だったのではないかと考えていましたが、そこに巧妙な策が秘められていたことを、後に筆者は知ることになります。

 このとき筆者や仲間の対戦格闘ゲーマーたちの反応は「新作出たんだ。じゃあちょっとやってみようか」というものでした。一通り触ってみて、浮かせてからのコンボを試してみるなど楽しんではいたのですが、『バーチャファイター2』や『キング・オブ・ファイターズ94』、『真サムライスピリッツ』といったタイトルの方が主流だったこともあり、ある程度はプレイしてはいたものの、それほど本腰を入れていたというわけではありませんでした。

 ただ、PS版の発売が年明けの3月31日だと知ったとき「移植にしてはずいぶん早いな」と違和感をおぼえたことを記憶しています。