じいじが子供のころ…カレーCMになったヒーローとは? 60年前“モナカカレー”とタイアップ「少年ジェット」 マンガ探偵局がゆく

引用元:夕刊フジ

 【マンガ探偵局がゆく】

 今回はみんなが大好きなカレーとマンガの調査だ。

 「先日、7歳の孫とカレーを食べていたとき『じいじが子供のころはモナカの中にカレーが入ったものを売っていて、マンガのヒーローがテレビ・コマーシャルをしていたんだぞ』と教えたところ、長男の嫁が『おじいちゃん、ウソばかり教えないでください。この子は信じて学校で話しちゃうから』と怒るのです。孫も『じいじはウソつきだ』と言い出すしまつです。ウソでないことを探偵局で証明してもらえませんか。嫁を降参させたいのです」(67歳・自営業)

 67歳の依頼人が小学生だったころのカレー事情を調べると、モナカの皮の中にカレールーが入ったものがたしかにある。ヱスビー食品のモナカカレーだ。皮は米粉が原料で、とろみをつける役目も果たしていたという。発売は1959年で、1個5皿分で35円。同じ年の春に創刊された少年週刊誌が30円だったから少し高いかな。

 このPRに一役買ったのが、同年3月からフジテレビで放送された実写ドラマ「少年ジェット」。船越探偵事務所の助手・北村健、またの名を少年ジェットが愛犬のシェーンとともに国際スパイのジャック・ジェームスや怪人ブラック・デビルと戦うというヒーローもの。ヱスビー食品の1社提供で、番組の終わりには首に風呂敷を巻いたシェーンが近所の食料品店までモナカカレーを買いに行くなどのタイアップ広告を流していた。その効果もあって、モナカカレーは、月に5万食も売れるヒット商品になったそうだ。

 原作は講談社の月刊誌「ぼくら」に同年2月号から連載された武内つなよしの連載マンガ「少年ジェット」。つまり、依頼人がマンガのヒーローがテレビ・コマーシャルといったのはウソではない。

 作者の武内つなよしは、昭和30年代の少年マンガを代表するマンガ家のひとりで、1954年から60年にかけて月刊誌「少年画報」に連載した時代劇マンガ「赤胴鈴之助」で一世を風靡。本作は「赤胴鈴之助」の現代版を狙ったもので、悪人であっても決して殺さないという赤胴精神が受け継がれているのが特徴。

 「ウーヤーター」という掛け声で雷撃のようなものを起こして相手を倒すジェットの必殺技・ミラクルボイスは、「赤胴鈴之助」の必殺技だった真空斬りをもとに武内が考え出したものだった。

 マンガは小学館クリエイティブの復刻版など、テレビ版もTCエンタテインメント発売のDVDで観ることができる。

 ■中野晴行(なかの・はるゆき) 1954年生まれ。フリーライター。京都精華大学マンガ学部客員教授。和歌山大卒業後、銀行勤務を経て編集プロダクションを設立。93年に『手塚治虫と路地裏のマンガたち』(筑摩書房)で単行本デビュー。『謎のマンガ家・酒井七馬伝』(同)で日本漫画家協会特別賞を受賞。著書多数。