テレ東社長も「逸材」と認めて送別…鷲見玲奈アナ電撃退社の本当の理由

引用元:スポーツ報知
テレ東社長も「逸材」と認めて送別…鷲見玲奈アナ電撃退社の本当の理由

 抜群のルックスになかなかいないコミュニケーション能力と対応力を兼ね備えた「逸材」。一記者として一目置いてきたテレビ東京有数の人気アナウンサーが、随分ともったいない辞め方に追い込まれた。

 同局の鷲見(すみ)玲奈アナウンサー(29)が3月いっぱいで退社。中田有紀(46、元青森放送)、神田愛花(39、元NHK)、川田裕美(36、元読売テレビ)ら多数の局アナ出身者が活躍する芸能事務所「セント・フォース」入りし、フリーアナとして活動していくことになった。

 2013年の入社後、スポーツ番組やバラエティー番組を数多く担当。「家、ついて行ってイイですか?」、「FOOT×BRAIN」など3本のレギュラー番組を持つ一方、同局のストロングポイントである卓球や柔道の中継を担当。東京五輪で金メダルが期待される卓球の張本智和(16)の密着インタビューを任され、同局の五輪中継メインキャスターの有力候補にも名前が挙がっていた。

 その人柄の良さも記者の間で評判だった。半年に1回開かれる改編発表説明会でも毎回、司会を担当。健康的な笑顔で大物プロデュサーたちにも物怖じせず、堂々とツッコむ。次々と笑いをとり、場をパッと明るくすることも多かった。

 1年前の改編会見でのこと。質疑応答の時間が限られている中、質問の機会を求めて挙手し続けた私だったが、結局、指名されなかった。すると、会見終了後、駆け寄ってきた鷲見アナに「せっかく手を挙げていただいたのに、お応えすることができなくて、すみませんでした」と、本当に申し訳なさそうな表情でペコリと頭を下げられた。

 局を代表しての司会としての気遣い。質問が回ってこないことなんて当たり前の日常を過ごす一記者に対する優しさに、ほんわかと温かい気持ちになった。同時に、その対人能力の高さ、マスコミ人に必要とされる人の気持ちのつかみ方のうまさに局の顔にふさわしい人柄、資質を兼ね備えたアナウンサーだなと思った。

 そんな看板アナのスキャンダルを報じたのが、昨年12月発売の「週刊文春」だった。鷲見アナと既婚者である先輩アナとの2年前の不倫疑惑。先輩アナは報道の直前に営業推進部に異動した。鷲見アナ自身も報道後、収録番組には出演するものの、レギュラーを務めていた生番組「追跡LIVE!SPORTSウォッチャー」は欠席していた。

 疑惑は真実なのか、すべてが不透明な中での今回の退社劇。どうにも納得がいかなかったから、最初から、その一点を聞くつもりで27日、東京・六本木の同局で行われた小孫茂社長(68)の定例会見に足を運んだ。

 自由質問になったとたんに挙手したが、他社の記者が先に聞いた。

 「今回の退社にあたり、社長へのあいさつはあったのか。社長自身は、どんな心境か」―。

 「私の心境?」と聞き返した同社長は「テレビ東京は小さな所帯とは言え、1000人を超える社員がいます。その一人ひとりに(退社の)あいさつは受けていませんので、直近で何かという記憶はありませんが」と戸惑い気味に答えた。

 その上で「(退社は)ご本人の希望と聞いております。新天地に旅立たれる形でお辞めになる方の場合、そこでこれまで以上の活躍をされることを祈っておりますと送り出すのが習慣となっています。今日集まったメディアの皆さんも、新天地で彼女が活躍できるよう応援してあげていただければありがたいなあと。新しい芽をさらに積み重ねて出してもらえれば、厳しい業界であっても必ず成功するだろうと思っているので、それを見守りたい」とした。

 さらに「鷲見アナにはいろいろな報道がありましたが」と聞かれると、「いろいろありました?」と逆質問。「皆さんがいろいろあったと報道されているのは目にしていますが、社内で調査して、皆さんが報道されるようなことは確認しておりませんというコメントを出し、ご本人も否定しています。私たちができる最大限のことを調査という形でして、そういう結論を出した」と「不倫報道」自体を否定。その上で「いろいろあったと言うのは、皆さんの紙面が賑やかだったということで、皆さんがちょっと忙しくなったかなということだと思います」と、いかにもベテランマスコミ人らしく続けた。

 日本経済新聞の編集局長出身で誰よりも記者の気持ちを理解し、常にまっすぐな答えを返してくれる小孫社長らしいウィットに富んだ言葉の数々。しかし、“文春砲”に端を発した不倫報道を社内調査の結果、完全否定する発言に、あくまで社員を守るトップとしての気概こそ感じた。しかし、では、なぜ、“えん罪”のような一連の報道が、それも2年前の出来事が東京五輪を目前にした今、勃発したのか。そして、その結果、五輪報道のエースと目されていた女性アナが退社に追い込まれたことにも納得がいかなかったので、私も聞いた。

 「鷲見アナはスポーツ番組でも活躍した逸材でした。そんな東京五輪の顔になるはずだった存在が、このタイミングで辞めることを経営者として、どう思っているのか」―。

 いつものようにこちらをじっと見つめた小孫社長は「確かに逸材ではありますが、他にも逸材はおります」と、同アナがエース級の存在だったことは認めた上で「本人のご希望ですので…。営業に影響が出るということで、まだまだお若い方の人生を引き止めるとか、そういう会社ではテレビ東京はございません。本人の希望があり、担当がきちんとそれを聞いて、今回の結論になったと思っています。営業でマイナスになるという視点はないと考えて下さい」ときっぱり言った。

 その上で「テレビ局と言うのは個人個人のいろいろな能力の積み重ねでしか成り立ちません。番組作りは特にそうだけど、それに関わらない所でも一人ひとりの個性を大事にしないと、中々、新しい視聴者をつかむような番組や親しみのある会社と皆さんから見てもらえなくなる。今回の件も例外なく本人の希望を聞いた上でのこと。ご本人の人生ですから…。それを最大限に優先したということです」と、テレビ局としてのあり方にまで踏み込んで答えてくれた。

 そう、時に人気タレント扱いも受ける女性アナだが、その実態は組織の中で、集団の論理の中で、もがき苦しむ一会社員に過ぎない。小孫社長の「逸材だが、他にも逸材はいる」と言う発言の裏には、鷲見アナが去っても、「モヤモヤさまぁ~ず2」で入社1年目にして人気者となった田中瞳アナ(23)の存在が証明するように、どんな人気アナにも代わりはいるというシビアな現実もある。

 必要以上にプライベートが取りざたされる女性アナの過酷さ、生存競争の厳しさも知っているからこそ、この日の小孫社長の「新天地での、これまで以上の活躍を祈っている」という言葉の温かさが、私の胸にも染みいった。

 そう、能力さえあれば、注目し、応援してくれる人は、どこにだっている。だからこそ、より環境が厳しくなるフリーになっても、笑顔で頑張れ! 社長も認めた「逸材」鷲見アナ。(記者コラム・中村 健吾)

 ◆鷲見 玲奈(すみ・れいな) 1990年5月12日、岐阜県岐阜市生まれ。29歳。首都大東京卒業後の13年4月、テレビ東京に入社。「ニュースモーニングサテライト」「7スタLIVE」などの報道・情報番組を経て、「家、ついて行ってイイですか?」「FOOT×BRAIN」などの人気番組に出演。15年から2年間務めた「イニング競馬」アシスタントとしても人気に。17年には局アナとして初めて「週刊ヤングジャンプ」の表紙と巻頭グラビアに登場した。特技は詩吟、ダンス。趣味はお菓子作り、お酒を飲むこと。血液型B。 報知新聞社