ダークホース的米映画「ミッドサマー」なぜか若い女性が支持

ダークホース的米映画「ミッドサマー」なぜか若い女性が支持

【大高宏雄の新「日本映画界」最前線】

 全く不思議な現象だというべきか。20代から30代の女性中心に、ある米映画がヒットしている。「ミッドサマー」(ファントム・フィルム配給)という作品で、ホラーともサスペンスともつかない筋書きながら、身の毛もよだつような怖い描写が連続する。いわゆるエグいシーンも多い。

 全国で106スクリーンの公開形態なので、大々的な宣伝があったわけではない。もちろん、よく知られた俳優は誰一人出ていない。普通なら、今どきの女子が詰めかけるような作品ではない。彼女たちは、いったいどこで情報を得て、何に関心を持ったのか。

 米国に住む若い男女4人が仲間の1人に誘われ、彼の郷里であるスウェーデンの片田舎の村に赴く。向かった先は、ある共同体の人々が住む広大な土地だった。そこで、さまざまな奇態な儀式が9日間ぶっ通しで行われる。恐怖劇の開幕である。

 アリ・アスター監督の前作「へレディタリー/継承」は、ホラーとして評価が高かった。前作からのファンの期待は高かったというわけだが、新作情報の浸透はファンだけにとどまらなかったようだ。SNSなどで広がるや先の女子たちにも響いたとみられる。若いヒロインの涙を流す表情が鮮烈なポスターも目を引いたと聞く。

 ただ、それだけでは彼女たちは映画館には来ない。筆者はここに、ネタバレ厳禁という最近顕著な映画ヒットの傾向を感じる。本作もまさにネタバレ厳禁だ。もともと女子は、ホラー的な怖がりを欲する人も多い。ネタバレ厳禁がもたらす好奇心の増大と、怖さへの欲望が重なり合ったとみる。

 果たして、映画は彼女たちの期待に沿うものだったのかどうか。なかなかに恐ろしい映画なので、好奇心が粉々に砕けた人がいても不思議ではない。

(大高宏雄/映画ジャーナリスト)