落語家・桂紋四郎が自宅から生配信の「テレワーク落語会」開催で話題沸騰

落語家・桂紋四郎が自宅から生配信の「テレワーク落語会」開催で話題沸騰

 逆境に負けへんで!! 新型コロナウイルスの感染拡大にともない、落語界も中止や延期の打撃を受けている中、上方落語協会に所属する桂春蝶(45)の弟子、桂紋四郎(32)が、大阪の自宅から落語を生配信する「テレワーク落語会」をスタートさせ、話題になっている。

 「生配信は初めてですね。もともとYouTubeで落語や、どうしたら落語家を呼べるのかなど、落語に興味を持っていただくための話を収録で行っていました。昨今の情勢で、僕も落語会の仕事が4本なくなりました。お客さまも外出自粛傾向にあられる中、なにかできないかと考え出したのが、これでした」と紋四郎は語った。

 第1回は24日の午後7時から笑福亭呂好、講談師の旭堂南龍と3人で2時間にわたってライブ配信。紋四郎が「ちはやふる」と「昭和任侠伝」、呂好が「井戸の茶碗」と「代書屋」、南龍が「太閤記~光秀の祝言」をたっぷりと披露し、視聴者を最大61人集めた。

 「38人で満員の東京の連雀亭でよく落語会をしている身としては、落語会で60人集めるのは大変ですよ。ホンマにありがたいです。当然ですが、お客さまからの拍手や笑い声が届かないので、不思議な感じがしますが、YouTubeならでの面白い現象もあり、こちらも楽しみながらテレワーク落語会をさせていただいています」

 YouTubeの特性として、視聴者がリアルタイムでコメントを発信。紋四郎がトークや“まくら”の間にそれを読み上げ、視聴者からの提案でその場でカメラで映す範囲を修正したり、落語家の名前を記した「めくり」の位置を貼りなおすなどのフットワークの軽さが、ライブ感と手作り感を盛り立てる。双方向でのやりとりが新鮮な、あたたかな空間が心地よかった。

 落語が終わると、コメント欄には「パチパチパチパチ~」との書き込みや、拍手の絵文字が降り注いだ。また初日は、落語の途中で、マンションの隣人が洗濯を開始。ゴゴゴゴゴ…というかすかな生活音まで配信される“ハプニング”も、在宅のテレワーク落語会ならではだ。

 視聴者からのコメントを参考に、桂源太(23)がゲスト出演した25日の2日目からは出囃子も流れ、画面の中に「テレワーク落語会」との手書きテロップも登場。Wi-Fiルーターも購入し、配信環境も強化した。

 チケット代金は投げ銭方式。紋四郎のツイッターやフェイスブックにアップしてあるメールアドレスに、紋四郎指定の入金方法を記入して送り、振り込んだり、将来の落語会で手渡ししたりするシステムを確立した。

 工夫したのが、木戸銭の活用方法だ。初日の24日は計2万5000円、2日目の25日は2万4000円の応援資金が振り込まれた。

 「1日につき1人5000円の“出演料”を頂戴しました。あとは、情勢が沈静化した後に『おおきに!テレワーク落語会出資。こちらは生です落語会』を大阪や東京、そして地方でも行おうと思っているので、そのときの交通費や会場代にあてたいと思います」。一過性のことではなく、落語という文化の未来を、しっかり見つめている。

 さらに感心させられたのが、終演後のフォロー。紋四郎がツイッターやフェイスブックで集まった資金などについて素早く会計報告。実にきっちりしており、逆境の中での企画力と人間性までが、小さなスマホ画面の中から垣間見えたのが、とてもうれしかった。

 三夜連続となる26日は午後9時スタート。桂あおば(32)がゲスト出演する。「YouTubeで『桂紋四郎』を検索していただき、チャンネル登録すると配信時に通知されます。きょうの時間は、ツイッターでアンケートをとって決めました。笑いで健康に。日々、進化している『テレワーク落語会』を、よろしくお願い申し上げます」。口上ばりの語り口調で締めた紋四郎が、力強く歩む。(山下千穂)

 ■桂紋四郎(かつら・もんしろう)

 1988年2月9日、大阪府吹田市出身の32歳。本名は迫優太。大阪大学工学部卒。大阪大学の大学院を中退した2010年9月、三代目桂春蝶に入門。上方伝統文化芸能ユニット「霜乃会」のメンバー。趣味は野球観戦、読書。ロックバンドのボーカルでもある。