仲野太賀「事務所には止められたけど…」“ある監督”の誘いを受け、強行日程でカンヌに向かった理由

引用元:テレ朝POST

ドラマ『ゆとりですがなにか』(日本テレビ系)でゆとり世代のモンスター社員を演じてブレークし、ドラマ『いだてん~東京オリムピック噺(ばなし)~』(NHK)、映画『淵に立つ』(2016年)、映画『50回目のファーストキス』など数多くのドラマ、映画に出演。シリアスからコメディーまで変貌自在に演じ分ける若手実力派俳優として引っ張りだこの仲野太賀さん。2020年2月7日(金)には、元乃木坂46の衛藤美彩さんとW主演をつとめた映画『静かな雨』の公開も控えている。


仲野太賀「事務所には止められたけど…」“ある監督”の誘いを受け、強行日程でカンヌに向かった理由


「第69回カンヌ国際映画祭」『ある視点』部門審査員賞を獲得した映画『淵に立つ』にも出演。

◆作品に臨むときは「最初で最後」の覚悟で

10代の頃から演技力を高く評価されていた太賀さんだが、知名度も飛躍的に高まったのが2016年。映画『淵に立つ』(深田晃司監督)で第38回ヨコハマ映画祭最優秀新人賞を受賞したもこの年だった。

「2016年は本当に転換期だったのかもしれないですね」

-深田監督とは映画『ほとりの朔子』(2014年)が最初ですか?-

「そうです。全部で3本やらせていただいてるんですけれども、最初『ほとりの朔子』に出させていただいたときは、僕はまだ18か19歳で、まだまだ無名でした。

ですがご縁があって出演させていただくことになって、『こんな日本映画を作る人がいるんだ』という驚きと、『これは絶対に良い作品になる』という確信がずっとありました。

実際に公開になったら、小規模な作品ではありましたが、反響も大きかったんです。深田さんとの出会いが自分にとってはすごく大きかったですね」

-そして2本目となる『淵に立つ』のオファーがあったときはいかがでした?-

「本当にうれしかったです。深田さんに限らずですけど、作品に臨むときには『最初で最後だろう』と思います。

また呼んでもらえるかどうかなんてわからないし、目の前の作品をどれだけ一生懸命やるかでしかないじゃないですか。

それがまた深田さんに呼んでもらえて、ましてや当て書き(その役を演じる俳優をあらかじめ決めて脚本を書く)で書いてもらえたことがすごくうれしかった。『頑張らないと!』って思いました」

映画『淵に立つ』はごく平凡な夫婦(古舘寛治&筒井真理子)の前に突然ある男(浅野忠信)が現れたことにより、平穏だった日常に不協和音が生じ始め、危機に瀕していくさまを描いたもの。太賀さんは、物語の後半で重要なキーパーソンとなる孝司役で出演。

-この作品では太賀さんが「第38回ヨコハマ映画祭」で最優秀新人賞を受賞されましたし、「第69回カンヌ国際映画祭」『ある視点』部門審査員賞を獲得しました。太賀さんもカンヌに行かれたそうですね-

「はい。弾丸で行きました。ちょうど『ゆとりですがなにか』の撮影中で、『これは行けないな』と思っていたんですけど、たまたま3、4日の撮休がもらえて。

海外で何が起こるかわからないので、万が一のことを考えて事務所には止められたんですけど、居ても立ってもいられなくて(笑)。

深田さんが『本当にカンヌには来られないの?』ってすごい連絡をくれたんです。

レッドカーペットにはどうしてもスケジュールが合わなかったんですけど、映画祭自体は2週間ほど開催しているし、監督も期間中はずっとカンヌにいる。深田さんから『ちょっとでもカンヌの雰囲気を太賀君に味わって欲しい。どうしても来られないのか?』って。

『もし、カンヌで取材とか、登壇に間に合わなかったとしても、一映画人として、カンヌに来るということの意味ってすごくあるから、ぜひ太賀くんに来て欲しい』。そんな連絡をもらったら、『これは行くしかない』と思うじゃないですか。気づいたら航空券を予約していました(笑)」

-カンヌに居られた時間はどのぐらいだったのですか-

「2泊だったと思います。感動しましたね。来るまでは遠い世界に感じていましたけど、これは夢なだけじゃない。自分が今生きている世界の地続きにちゃんとあるもので、実感が湧いてきたんです。次はレッドカーペットを歩く一人の俳優として再訪したいと強く思いました」

-深田監督は太賀さんにその雰囲気を体感してほしいと思ったのでしょうね-

「そうだと思います。世界中の映画人がカンヌに集まって、打ち合わせをする人もいれば、昼からお酒を飲んでこの空気を楽しんだりとか…。

カンヌのメインストリートにも大きなポスターがズラッと並んでいて、そういうのを見るだけで幸せでした。

映画がこんなに愛されている、こんな世界があるんだって。もっともっと映画に携わっていきたいと思えた2泊4日の旅でした」

そして3度目となる深田監督作は2018年、映画『海を駆ける』。この映画は、全編2004年の地震による大津波で大きな被害を受けたスマトラ島で撮影。海からやってきた謎めいた男(ディーン・フジオカ)が起こす奇跡を描いたもの。太賀さんは現地で生まれ育った日系人の青年・タカシ役で出演。

-真っ黒に日焼けして現地にしっかり溶け込んでいましたね-

「そうですね。そういう風に見えるようにつとめました(笑)。1カ月くらい行きっぱなしだったんですけど、セリフは現地のスタッフやディーンさん、ほかのキャストの方々にも教えてもらいながら、みんなに作ってもらったインドネシア語です(笑)」

-印象に残っていることは?-

「あまりにも印象深い出来事が多すぎて、どれも鮮明に覚えています。海外での合作は色々大変だって聞くんですけど、そんなことは一切なくて、すばらしい現場でした。

日本人とインドネシア人、スタッフもキャストも半々くらいだったんですけれども本当に良いバランスで良い意味で共存していて、違う国の違う人種、違う宗教の人たちが一つの映画を作るという、その行為自体がとても美しいし、それができるのが映画なんだろうなって思いました」