あふれるフェイクニュース、ラジオから耳を離すな/芸能ショナイ業務話

 60歳を過ぎて目が疲れやすくなってくると日々、ラジオは手放せない。ここ数年、目覚まし代わりにラジオを聴いた後、テレビを見たり新聞を読んだりするのが日課になっている。

 晴れた日の休日も趣味のジョギングのお供は、スマホから流れてくるラジコ。好きな番組をザッピングしながら、ニュースやエンタメ情報、多彩なパーソナリティーのおしゃべりに耳を傾ける。

 10代のころも深夜放送や大学受験ラジオ講座にお世話になったが、今が一番、ラジオを聴いているのではとも思う。何より、雑用をこなしながら、さまざまな情報が入ってくるのでありがたい。

 とりわけ東日本大震災の起きた3・11が近づくたび、迅速で正確なラジオのありがたみを思う。そんな折でもあるせいか、文化放送が打ち出した2020年度のキャッチフレーズ「ミミからだと ココロに届く 文化放送」は、すんなり納得がいく印象だ。

 同局の上口(かみぐち)宏社長は先日の定例会見で「シンプルなキャッチフレーズですが、音声媒体としては音や声が心に深く刺さると思っている」と説明。季節柄、パチパチとはじけるたき火の音を伝える特番などでも注目を集める同局だが、たき火の持つぬくもり同様、ラジオならではの出演者の本音が聴けるのも楽しい。

 くしくも、NHKの前田晃伸(てるのぶ)新会長も先月、就任会見で記者が「好きな番組は何ですか」と聞いた際、最初に挙げたのが「ラジオ深夜便」だったのには驚いた。75歳というご高齢というせいもあろうが、大河や朝ドラ、ニュースなどのテレビ番組ではないのが意外だった。

 しかも、前田会長は「ラジオは災害対応などで有効だと思っている。非常時にも聴くことができる」と一番の特性を指摘。「ラジオにはラジオの良さがある。私の願望としては、より多くの人にラジオを聴いてもらいたい。車に乗っているときなど、聴く機会はいろいろあると思う」とあふれんばかりのラジオ愛を語ったのだ。

 NHKの新副会長に就任した正籬聡(まさがき・さとる)氏も先日開いた就任会見で、既存メディアへの信頼の回復ぶりを強調。ネット上にはフェイクニュースがあふれるだけに、NHKも民放もラジオが今後、どんな進化や独自性を見せるのか。ますます耳が離せない。(М)