妻夫木聡「ステージが変わった」…21日公開「Red」で愛人役セクシーな大人の色気全開

引用元:スポーツ報知
妻夫木聡「ステージが変わった」…21日公開「Red」で愛人役セクシーな大人の色気全開

 俳優の妻夫木聡(39)が、女優・夏帆(28)主演の映画「Red」(21日公開・三島有紀子監督)に愛人役で出演する。これまでになく、セクシーな大人の色気を全開させるが「仕事の世代が一つ上に上がった。ステージが変わった」と喜ぶ。女優・マイコ(34)と2016年に結婚、昨年第1子が誕生し「家族、子供ができたというのが大きい」と変化を実感する妻夫木が、40歳の節目を迎え、今後の俳優人生を語った。

 直木賞作家・島本理生さんの同名小説を映画化した今作で妻夫木が演じるのは、かつて恋人だった人妻(夏帆)と禁断の恋に陥る男。「自由にやらせていただき楽しかった」と振り返る。夏帆との“不倫関係”は「(夏帆に)覚悟というのが最初から見えた。難しい役なのですごい。今までこういった作品に出ることがなかったけど、あんな顔もできるんですね。僕は役と同じで見守るだけでした」

 妻夫木はさわやかなイメージが強いが、今作では大人の色気を振りまき、濃厚なラブシーンにも挑んだ。

 「若い頃はいろんな役で“新人”というのが多かった。何かを始める高校生、社会人の新人、夢を諦めきれない若者、研修医とか。なかなかこういう役のイメージを持たれることはなくて。やっとそういう年になって、オファーをいただきうれしかった。10年後に自分の中でターニングポイントとなっていたらうれしい」

 1997年、300万人が応募した大規模オーディションでグランプリを獲得し、翌年、17歳で俳優デビューした。華々しいスタートかと思いきや「僕は挫折から始まったタイプです」と明かす。「俳優は誰でもできるものだと思っていた。芸能人になれば、お金も稼げて、女性にもモテて、そういう人生だと。でも実際は正反対。目の前の仕事にちゃんと向き合えるかで精いっぱいで。どうしていいか、やり方も分からなくて、とにかくガムシャラでした」

 20歳の時に公開された初主演映画「ウォーターボーイズ」(2001年公開、矢口史靖監督)で一躍注目を集めた。「一生懸命作ると信じてやると、しっかりと結果がついてくるんだなと実感できた作品。映画の素晴らしさを肌で感じた」。仕事に取り組む状況を楽しめる余裕もできる中で「いろんな人と出会い、有名な役者や監督とか、憧れてた人と一緒の土俵で仕事できるようになって。そんな自分が、すごくうれしかったのを覚えています」。玉木宏(40)ら「ウォーターボーイズ」のメンバーとは今でも集まるという。「5年前かな。プロデューサーが亡くなった時にしのぶ会で集まって。そこからみんな集まるようになった。1年に1回と決まってないですけど、恒例ですね」

 30代に入ってすぐ、転機が訪れる。10年の映画「悪人」(李相日監督)で、死んだように生きる孤独な殺人犯が、血の通った人間に変わる瞬間を見事に表現。モラルと犯罪という難しい題材の作品で存在感を放ち、日本アカデミー賞の最優秀主演男優賞など賞を総なめに。俳優としての地位を一気に押し上げた。

 「役者は芝居することが仕事。芝居に集中しないといけない。でも、それまでは人との付き合いや気遣いだとかに頭が行っていた。でも、この作品でシンプルに芝居のことだけを考えて、初めて終わった時に笑みがこぼれた。役から解放されて、すごく安心した。新たなる自分に出会えた。ターニングポイントでした」

 ドラマの共演で知り合った女優のマイコと35歳の時に結婚。家族ができたことで、俳優として役作りの方法も変わった。「結婚前、役作り中は他人と一切連絡を取らなかったので、妻には迷惑をかけました。結婚後は家に妻がいるのでオンオフはつけるように意識してます。今は玄関を開けた瞬間にリセットです」

 第1子も誕生し、父親の自覚も芽生えた。「子どもができたというのが一番大きいかも。全然違う。それまでは自分のことばかり考えてたけど、今は家族のために生きたい。死ねないですよ。昔は役をやりながら死んでも本望だと思ってたけど、今はない。一生芝居したいけど、子どものためにも生きていかなきゃ」

 今年の12月で40歳を迎える。「時間と余裕が少しずつ出てきて、家族も増えて、思い描く人生設計のためにどうするか考えるのが当たり前になってきた。今後を考えるのが楽しくなった」

 これからの俳優人生はどうなるのか。「やりたい役というのは今ははっきりしない」と語るが、台湾の巨匠ホウ・シャオシェン監督の映画「黒衣の刺客」(15年)での経験が今も深く胸に刻まれている。「日本は脚本があって、それを読んで演技をする。でも、ホウ監督って脚本がすべて頭の中にあって、『先に自分が思った通りに動いてくれ』と。自分が何者かわからない中で、人物を演じたらどうなるのか。記号化されてない何かをやりたい」

 俳優として洗練され、家族という守るものも背負った。まさしく進化かと思いきや「進化というより、アップデートしている感じに近いのかな」という。「改善のためにアップデートされてるのか、それとも改悪なのか、それはわからない。でも、妻がいて子どもがいて、今が楽しいです」。不惑を迎える男のバージョンアップから目が離せない。(ペン・増田 寛、カメラ・宮崎 亮太)

 ◆妻夫木 聡(つまぶき・さとし)1980年12月13日、福岡県生まれ。39歳。97年の「ザ・スタアオーディション」でグランプリを獲得し、芸能界入り。2001年、初主演映画「ウォーターボーイズ」でブレイク。04年「ジョゼと虎と魚たち」など3本で報知映画賞主演男優賞を受賞。09年、NHK大河ドラマ「天地人」(直江兼続役)に主演。10年「悪人」で日本アカデミー賞の最優秀主演男優賞、16年「怒り」で同・最優秀助演男優賞を受賞した。身長171センチ、血液型O。

 ◆「Red」 直木賞作家・島本理生(りお)氏の同名小説が原作。裕福な夫、かわいい娘、何も問題のない生活を過ごしていた塔子(夏帆)が、10年ぶりにかつて愛した男・鞍田(妻夫木)に再会する。鞍田は塔子の気持ちを少しずつほどいていく。現在と過去が交錯しながら向かう先の、誰も想像しなかった塔子の決断とは―。映画オリジナルの結末に心を揺さぶられる。 報知新聞社