「怠け者…背中叩いて」「過去生きた人々に感謝」 芥川・直木賞贈呈式

引用元:産経新聞
「怠け者…背中叩いて」「過去生きた人々に感謝」 芥川・直木賞贈呈式

 第162回芥川賞・直木賞の贈呈式が20日夜、東京都内で開かれ、芥川賞に選ばれた古川真人さん(31)と直木賞の川越宗一さん(41)がそれぞれ喜びと抱負を語った。

 古川さんの芥川賞受賞作「背高泡立草」(すばる10月号)は長崎の島にある先祖の家の草刈りに訪れた親族の姿を、島の長い歴史に重ねて描く。選考委員の松浦寿輝さんは、さまざまな人々の「声」を繊細にすくい上げる受賞作の文章をたたえ、「人に対するやさしさが染み通った作品世界。これは得難い資質」と評した。

 「もう死んでしまったおじさんやばあさんが(自分が)書いている文字を後ろからのぞき込んで、うるさいことを言ってくるのを聞いては書き直す-。そんなふうに書いていくたびに『ああそうだった』という感慨がある」と創作過程を振り返った古川さん。「ここに来てくださった方々からも、どやしつけられたからこそ芥川賞をいただけた。今後もどんどん背中をたたいてください。生来が怠け者なのでこれは切なる願いです」と話した。

 一方、川越さんの直木賞受賞作「熱源」(文芸春秋)は樺太(サハリン)で生まれたアイヌのヤヨマネクフと、ロシア皇帝暗殺を謀った罪でサハリンに流刑となったポーランド人・ブロニスワフの人生の交差を描く歴史小説。選考委員の角田光代さんは「熱を持って書かれた、壮大で豊かな物語」とたたえた。

 「歴史小説は必ず作品の題材となる時代があり人々がいる。過去に生きたすべての人々に感謝したい」と話した川越さん。節目となる受賞にも「そこに作家はとどまるのではなく、作品を書くたびに新しい人生が始まるのが作家活動。大変大きな賞をいただいたが、次は面白いものを書かねばならないという覚悟を今は持っている」と健筆を誓った。

 新型コロナウィルスの国内での感染拡大を受け、賞を主催する日本文学振興会はパーティーの時間を30分ほど短縮。会場では希望者が使えるようにマスクも用意された。