サンドウィッチマンが自然体で“厳しいリアル”を聴く NHK「病院ラジオ」での功績

サンドウィッチマンが自然体で“厳しいリアル”を聴く NHK「病院ラジオ」での功績

【テレビ 見るべきものは!!】

 サンドウィッチマンの2人がラジオ局を開設する。場所は病院で、2日間限定の生放送だ。ゲストは患者や家族など。院内各所に小さなラジオが置かれ、誰でも聴くことができる。

 先週の舞台は、三浦半島にある久里浜医療センターだった。60年前、日本で初めてアルコール依存症の専門病棟を設立。現在はギャンブル、ネット、ゲームといった依存症の治療も行っている。

 芝生の庭を見渡せる簡易スタジオに、ゲストがやってくる。入院中の30代男性は、他人に「アル中」「負け組」と思われるのが怖い。ずっと会わせてもらえない娘に会うためにも頑張ると話す。

 また5回もの入院経験がある50代男性は、飲酒のトラブルで離婚。その難しさを痛感しながら、「1日断酒」をモットーに過ごしているそうだ。

 さらに夫が入退院を繰り返しているという妻は、「麻薬と一緒で、家族を巻き込む病気ですね」と笑顔で語った。夫はひとりでラジオを聴いている。

「孫の成長を一緒に見たい」という妻の言葉に何を思っただろう。

 この番組、テーマは病気だが暗くはない。それはサンドの功績だ。単なる好奇心でも同情でもなく、自然体で「厳しいリアル」を聴く2人。患者たちも、語ることで「今の自分」を確かめていく。

 ラジオならではのパーソナルな関係性をテレビに取り入れた、ドキュメンタリーの秀作だ。

(碓井広義/上智大学教授=メディア文化論)