「M4シャーマン戦車」「M40ビッグショット」に込めたジオラマの“物語性” 

引用元:オリコン
「M4シャーマン戦車」「M40ビッグショット」に込めたジオラマの“物語性” 

 1958年に国産プラモデルが産声をあげてから60余年、黎明期から現在に至るまで、その歴史を支えてきたのは戦車・艦船・航空機といったスケールモデル(※縮尺に基づいて忠実に再現した模型)だ。今回は、ジオラマの1枚絵に“物語性”を付与する大塩恒平氏と、アメリカ軍の自走砲最終発展型『M40(愛称:ビッグショット)』を制作した空探氏の“匠の技術”を紹介する。

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■ジオラマの演出は“異種格闘技”(大塩恒平)

 従来、戦車や航空機といったスケールモデルでは実物通りの模型を作るという事が正解であり主流だ。しかし、大塩氏は「鑑賞者に物語を効果的に訴求する“物語性”や“演出”にも力を入れている」と、自身が取り組むジオラマ制作の方向性について説明してくれた。

 とはいえ、言葉も動きもないジオラマ作品で“物語を作る”ことは難しい。だからこそ、漫画やアニメ、映画といった異なる分野の作品を鑑賞して刺激を受けることが重要だと氏は強調する。それはさしずめ「一種の“異種格闘技”と呼べるかもしれない」とも。

 そんな大塩氏が1枚絵でストーリーを表現する際、もっとも大事にしているものとは。

 「名画と呼ばれる絵は5つの構図に分かれることが知られています。その中の1つである3角構図を意識しています。台座の両端から戦車の頂点を結び3角形を作ることを意識しました。こうすることで安定感のある絵を作ることができます。また、左斜め手前への電話線、右斜め手前への戦車。これら2つを交差させることで疑似的に線遠近法を作っています」

 その他にも「レイヤー分け」という技法があるという。これは奥から背景の建物(一番大きい)、真ん中に戦車(中ぐらい)、手前に車(小さい)と段々状になるようにレイヤーを分けることで、絵として完成された見やすい作品になるのだそう。

 このように、鑑賞者の視点をとことん意識している大塩氏は「ジオラマの1枚絵においては“情報量の集中”が重要」だと強調する。誰しも人物に目が行きがちだが模型でもそれは同じ。そのため、本作では人を戦車の砲塔付近、つまり中心に集めることで情報量を集中させているのだと説明してくれた。

 次に挑戦したいジオラマについて聞くと「単純にカッコイイだけでは無いジオラマを作りたいです。“新しい物語”を模型を通じ発信していきたいです」と笑顔で答えてくれた。