勝算なき上京に至ったタカアンドトシの挫折とコンビ愛

勝算なき上京に至ったタカアンドトシの挫折とコンビ愛

【今週グサッときた名言珍言】

「あ、コンビの悪口はコイツも言わないんだな、って。だから俺も絶対に言わないことにしとこうって」(タカアンドトシ・トシ/日本テレビ「アナザースカイⅡ」2月7日放送)

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 タカアンドトシは、仲の良いコンビとして知られている。トシ(43)は、タカ(43)の態度を見て相方の悪口は言わないと決めたという。

 ある時、タカが先輩たちと飲みに行った。その時、先輩はそれぞれの相方の悪口をズッと言っていた。その日のことをトシに「困ったよ」と話すと、「おまえも言ったんじゃねぇのか?」とトシは尋ねた。すると、タカは「俺は言ってねぇよ」ときっぱりと答えた。それを聞いてトシが決意したことを語ったのが今週の言葉だ。

 もともと、中2の頃、タカが通う学校にトシが転校してきて2人は出会った。プロレストークで意気投合した彼らは、自然と2人で漫才のまね事をするようになった。別々の高校に進学したにもかかわらず、週末には必ずどちらかの家に集まり、8ミリビデオを回して自作の“番組”を作って遊んだりしていた。

 芸人を志していたタカは、トシの才能にほれ込んで高校の時にお笑いの道に誘った。2人はオーディションに合格し、1994年冬に札幌よしもとの1期生となった。「よしもと」のブランドで、デビュー間もない若手にもかかわらず仕事はたくさん舞い込んだ。だが、実力も経験も不足していた。3年ほどで化けの皮が剥がれていった。

 ストレスもたまっていたのだろう。朝の主婦向けの情報番組でタカが「ファック・ユー!」などと画面に向かって叫ぶ“事件”を起こしたりもし、テレビの仕事は激減していった。

 そんな中で大きなチャンスが舞い込んだ。North(札幌)、East(東京)、West(大阪)、South(沖縄)からなるユニット「news」が結成されるというのだ。

 もちろん、タカトシは札幌よしもとのエース。人気・実力・実績はナンバーワン。お笑い未開の地を2人で切り開いてきた自負もあり、自分たちが選ばれるものと確信していた。だが、抜擢されたのはもっとも仲の良かった後輩のアップダウン。タカは荒れに荒れ、連日連夜カラオケで喉を潰していた。

「おまえ、漫才できなくなるほど、カラオケ行ってんじゃねえよ」

 初めてトシに注意された。それがタカはうれしかった。「なかなか文句言わないヤツなんで。その時一言いわれた言葉が響いて」「こいつだってつらいのに、真面目にやってたんだって気付いて」(日本テレビ「99プラス」09年9月1日)立ち直った。

 このまま札幌で続けてもお笑いが嫌いになってしまう。だったら、最後に夢だった東京で挑戦してみよう。タカトシは勝算もないまま、上京した。だから、地元を2人で開拓したように、常に2人で立ち向かっているのだ。

(てれびのスキマ 戸部田誠/ライタ―)