気弱な「皿洗い」の秘密とは? パリのお仕事群像劇『Artiste

引用元:マグミクス
気弱な「皿洗い」の秘密とは? パリのお仕事群像劇『Artiste

 パリの高級レストランで働く、弱気でさえない皿洗いの青年・ジルベールが、その隠れた才能を発揮し成長していく、さもえど太郎先生のマンガ『Artiste(アルティスト)』。電子書籍配信サイト「コミックシーモア」で開催された、『みんなが選ぶ!!電子コミック大賞2020』男性部門を受賞した同作品は、「あまりの面白さに一気買い」「夏の日のレモンソーダみたいなマンガ」とネット上でも話題です。

【画像】気弱そうな主人公・ジルベールの「謎」に引き込まれる

 主人公のジルベールは、高級レストランで働く皿洗い。「なぜ皿洗いをしているのか」「記念日パーティーでなぜワインを割ってしまったのか」などの小さな謎が、破天荒な新入り・マルコにより少しずつ繋がり、明らかになっていきます。

 主人公はジルベールですが、物語は最初マルコの視点から始まります。マルコから見たジルベールは「皿洗いなのに料理に詳しい先輩」。しかし、同僚の話やジルベールとの会話から、マルコは少しずつジルベールの「本当の姿」に気付いていくのです。

 パリの高級レストランとはいえ、厨房は「何やってんだ、馬鹿野郎ッ!」「死ねーッ!」という怒号が飛び交う戦場。そんな環境のなか、弱気ながらも仕事を続けるジルベールの秘密から、だんだんと目が離せなくなります。

 ジルベールやマルコをはじめ、他の個性豊かなキャラクターたちも魅力的です。マルコは本当にしたい仕事を探して舞台の照明スタッフ、ベビーシッターなど職を転々としており、レストランの敏腕シェフ・カルマンは重大な秘密を抱えています。そんな父・カルマンの最近の変化を心配する息子のモーリスや、カルマンの店から腕のいい店員を引き抜こうとするメグレーなど、それぞれのキャラクターが「生きて」日々を送っています。彼らが悩みながら前に進む姿は、料理マンガというよりお仕事マンガに近いのではないでしょうか。

 また、作画の美しさにも注目です。一見シンプルに見えますが人物・背景・料理に至るまで丁寧に書き込まれており、パリのおしゃれな雰囲気が感じられます。

 ジルベールの持つ「謎」が解けたところで、物語は本格的に動き出します。その謎とは何なのか、ジルベールは一体どうなるのか……? 巧みに張り巡らされた伏線が少しずつ回収されてじわじわと面白さが増していく、まさにスルメのような味わいの作品です。 新美友那