獣神サンダー・ライガーはマスク越しに喜怒哀楽が伝わる表現者

獣神サンダー・ライガーはマスク越しに喜怒哀楽が伝わる表現者

【今週グサッときた名言珍言】

「いやいや、夢を見たのは俺だから」(獣神サンダー・ライガー/テレビ朝日「ワールドプロレスリング」2月1日放送)

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 今年1月、惜しまれながら引退したプロレスラーの獣神サンダー・ライガー。彼は「僕は楽しみたいだけだから、プロレスが好きだから『次こんなことしたいな、あんなことしたいな』、それだけなんですよ」と語る。よくファンからは「ライガーさん、夢をありがとう」と言われるが、「そうじゃない」とライガーが語った言葉を今週は取り上げたい。

 今後は「解説席に早く座ってジュニアの試合、見たい」と言う。解説役はもちろん、きっとこれからも「水曜日のダウンタウン」(TBS)といったバラエティー番組などでも変わらず活躍してくれるだろう。

 彼の試合が最初にテレビで中継されたのは、まだマスクをかぶる前の素顔時代。「一発でやられました。なんだこりゃと思いました。いやぁ、酷かったですねえ」(文芸春秋社「文春オンライン」17年6月23日)と振り返る。試合内容ではない。自分の顔が、だ。

「中学の頃からマスクマンに憧れていた理由というのが、その時にわかりましたね。あ、俺自分の顔をブサイクって認識してたんだって(笑)」(同前)

 デビューしたときからマスクマンに憧れていた彼は、会社から「ライガー」を打診された際、二つ返事で快諾した。そのド派手なキャラクターはすぐにバラエティー番組制作者の目に留まり、「ウッチャンナンチャンのやるならやらねば!」(フジテレビ)からのオファーがやってきた。

 彼は笑福亭仁鶴やオール阪神巨人を「神」とあがめるほど、お笑い好き。そのためか、バラエティーの出演にまったく抵抗はなかったという。

「『自分を表現したい』という共通のものがあるんじゃないんでしょうか、芸人とプロレスラーには。僕自身、リングは試合をする場でもあるけれども、自分自身を表現する場だとも思ってます」(同前)

 マスクマンでありながら誰よりも表情は豊か。喜怒哀楽が伝わってくる。だからこそ「世にも奇妙な物語」(フジテレビ)や「レンタル救世主」(日本テレビ)などのドラマにもマスクをかぶったまま、出演できてしまう。

 ライガーは常に自分が楽しんでいることを全身で表現している。プロレスの解説もそうだ。

「その目線がファンの人に言わせると、同じ目線。すごく共感できるって言ってくださる方もいる。『ライガーさんが楽しんでいるの、すごく楽しいです』って」(同前)

 プロレス界の“レジェンド”にもかかわらず、後輩たちをファン目線で見守る。冒頭の番組でも彼はてらいなく、こう言うのだ。

「任せたぞっていうか、もうみんなスゴいですからね」

(てれびのスキマ 戸部田誠/ライタ―)