天才たちによる推力も手伝って大きく飛翔したPUFFYの『JET CD』

引用元:OKMusic
天才たちによる推力も手伝って大きく飛翔したPUFFYの『JET CD』

OKMusicで好評連載中の『これだけはおさえたい邦楽名盤列伝!』のアーカイブス。今回は実力派アーティストがプロデュースし、海外進出も果たしたという点では、Perfumeやきゃりーぱみゅぱみゅらの先駆けとも言える存在であるPUFFYの代表作である『JET CD』を取り上げたい。
※本稿は2015年に掲載

有名音楽家が多数集結

13曲中9曲がタイアップ付き。コンポーザーにプロデューサーである奥田民生、そしてデビューシングル「アジアの純真」で民生とタッグを組んだ井上陽水はもちろんのこと、草野正宗(スピッツ)、奥居香( プリンセス プリンセス)、トータス松本(ウルフルズ)、Dr.StrangeLoveらが参加している。『JET CD』はPUFFY初のミリオンヒットを記録したアルバムで、今となってはこれだけの座組があれば、それも当然といった印象すらある。むしろ、若干トゥーマッチな感じすら漂っているが、当代、いや後世にも名を残すこと確実のアーティストが手掛けているだけあって、流石によくできたポップアルバムである。

説明するまでもない感じだが、まずメロディーが絶品である。民生楽曲は後述するとして、M3「CAKE IS LOVE」(作曲:井上陽水)、M4「愛のしるし」(作曲:草野正宗)、M5「春の朝」(作曲:奥居香)、M8「ネホリーナハホリーナ」(作曲:トータス松本)…今聴いても天才たちの見事な仕事っぷりを確認できる。「CAKE IS LOVE」のアジアンテイストあふれる優雅な調べ、「春の朝」のやわらかく温かい旋律、それぞれにザッツ井上陽水であり、ザッツ奥居香である。「愛のしるし」のキャッチーさはメロディーメーカー、草野正宗の天賦の才を感じざるを得ないし、ブラックミュージック・フィーリングのあるソウル系ナンバー「ネホリーナハホリーナ」は、どうしようもなくトータス松本だ。

奥田民生のメロディーセンスは、これまた改めて言うまでもないだろう。当時PUFFYが“脱力系”と言われていたことも関係してか、それがそもそも民生の資質と合ったのか合わせたのか分からないが、M11「サーキットの娘」、M13「MOTHER」のAメロ辺りではあえて起伏が抑えられている印象があるものの、サビでの盛り上がりはやはり流石で、特に「MOTHER」で見せるマイナー調だがそれゆえにノスタルジックさを醸し出すメロディーラインは素晴らしい。キャッチーさで言えば、M12「渚にまつわるエトセトラ」のパンチ力あふれるサビに止めを刺すであろう。《カニ 食べ 行こう/割り切って 行こう/止まり木に あのハリソン フォード/私たちは スゴイ ラッキーガール》という間違いなく天才、井上陽水にしか書けないリリックと相俟って、聴く気のない人の耳をもこじ開けてくるかのようなインパクトがある。聞けば、兵庫県のJR西日本山陰本線城崎温泉駅ではズワイガニ漁の解禁に合わせて入線メロディーを冬季限定でこの曲に変更すると言うし、約20年経った今でもテレビの旅番組のBGMとして「渚にまつわるエトセトラ」は重宝されているという。すでに歴史に残るナンバーになっているのだ。