武器はネガティブ漫才「宮下草薙」の力関係に微妙な変化が

武器はネガティブ漫才「宮下草薙」の力関係に微妙な変化が

【2020 新春「笑」芸人解体新書】#9

 最近出てきた新しい世代の若手芸人を「お笑い第7世代」と呼ぶことがある。その代表格ともいえるコンビが宮下草薙だ。

 ボケ担当の草薙航基(28)とツッコミ担当の宮下兼史鷹(29)の2人組。草薙がひとりで勝手に後ろ向きの妄想を膨らませてパニックに陥る「ネガティブ漫才」を持ちネタにしている。

 草薙は高校に入学した直後の身体測定で「顔の割に胸板が厚い」とクラスメートにからかわれた。そこで彼は「このままいくと、公園で服を脱がされて『踊れ』まであるな」と思い、そのまま高校を中退してしまった。妄想ひとつでせっかく入学した高校をすぐ辞めてしまうのだから、そのネガティブ気質は相当なものだ。

 2018年1月1日に放送された芸人の登竜門といわれる「おもしろ荘」でテレビ初出演を果たして以来、バラエティー番組で見かける機会が増えてきた。特に、ネガティブキャラの草薙は引っ張りだこの人気だ。

 彼がバラエティー番組で重宝されているのは、追い詰められた時に先輩芸人に反論して噛みついていくガッツがあるからだ。時には勢い余って先輩に失礼なことを言ったりすることもある。でも、必死で歯向かう草薙には何ともいえない可愛げがあるため、それが笑って受け入れられている。

 いじめられっ子のような雰囲気の芸人が、先輩芸人になすがままにイジられていたら、いじめのように見えてしまい印象が良くない。だが、草薙はすぐに開き直るので、そこまで気まずい感じにならない。この噛みつき癖こそが草薙の最大の武器である。

 もともとは宮下の方が草薙よりもお笑いに詳しかった。宮下は草薙にネタ番組を見せて感想を聞いたり、街頭ロケの練習をさせたりして、草薙を厳しく指導していた。

 だが、最近では草薙だけが番組に出ることも多く、場数を踏んだ草薙が経験値では宮下を上回るようになり、関係性が変わりつつある。コンビの力関係が徐々に変わっていくところも興味深い。

 個人的には宮下の巻き返しに期待したい。ラジオで見せた、自分を棚に上げてほかの芸人のことを偉そうに分析するキャラは面白かった。今年コンビとしてさらに飛躍するための鍵は宮下が握っているのではないかと思う。

(ラリー遠田)