阪神大震災、精神科医が粉骨砕身「今年のナンバー1」ドラマと断言! 「心の傷を癒すということ」

引用元:夕刊フジ

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 気が早いが、NHK土曜ドラマ『心の傷を癒すということ』(8日が最終回)を今年のナンバー1と断言したい。第1話「神戸、青春の街」は1月18日に放送された。その前日は阪神・淡路大震災から25年だった。

 神戸の街の俯瞰(ふかん)ショットで始まり、広場には追悼の「1.17」の文字がある。〈震災は、人々から多くのものを奪い去った 失ったものはあまりに大きく それを取り戻すことはできない〉とのテロップ。

 ピアノのソロ演奏がかぶさり、主演・柄本佑のモノローグ。「たとえば、病気になること たとえば、人が死ぬこと 戦争も 貧困も 災害もそうや この世界は人の心を傷つけるもんであふれてる 人の苦しみを さっと拭い去ることができたら どんなにええやろと思う でも それはでけへん かみさまとちゃうから 人間にはでけへん ほとんどなにも それでも ぼくにできることは なんやろ」

 ピアノを弾いていたのは白衣で車椅子に座る柄本。精神科医の役だ。自らも被災しながら、心のケアに奮闘し、惜しくも志半ばで病死した在日韓国人医師、安克昌氏がモデル。脚本は桑原亮子、音楽は世武裕子が担当。

 第1話は文字通りの「青春」編をじっくりと描いた。後に妻となる尾野真千子と出会う場面はとりわけ秀逸。名画座で小津映画「東京物語」を見終え、明かりがつくと近くに座っていた尾野が尋ねる。東山千枝子と原節子のやりとりで、原はなんと答えたかと。柄本は地下鉄(?)がちょうど通過してセリフが聞こえなかったと答える。後日、2人はもう一度見にきて再会する。だが、同じシーンでまた電車の音。顔を見合わせ苦笑する2人。

 「東京物語」を見るたび、このドラマのこともきっと思い出すだろう。

 「青春」編のラストは厳しい。柄本と尾野と幼子が川の字に寝ている。枕元の目覚まし時計が「1・17 5:46」と液晶文字を表示。長い暗転。そして、当時のニュースアナの声とともに第2回「僕たちの仕事」の予告。

 つらいが、癒やされるドラマだ。(新橋のネクタイ巻き)