厚労省が「ゲーム依存症対策関係者連絡会議」を開催ー資料には「中高生のゲーム依存の疑い93万人」の記述も、情報には疑問点か

引用元:Game Spark
厚労省が「ゲーム依存症対策関係者連絡会議」を開催ー資料には「中高生のゲーム依存の疑い93万人」の記述も、情報には疑問点か

(c) Getty Images
厚生労働省は、2月6日午前10時30分より「ゲーム依存症対策関係者連絡会議」を開催しました。

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同会議は、精神疾患の1つとして取り上げられることとなった「ゲーム依存症」対策を目的としたもの。公開されている資料によれば、行政機関からは厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長の橋本泰宏氏や経済産業省商務情報政策局コンテンツ産業課課長の高木美香氏らが、関係団体からは依存症対策全国センター長(国立病院機構久里浜医療センター院長)の樋口進氏や一般社団法人コンピュータエンターテインメント協会理事の松田洋祐氏らが出席していることが明らかになっています。

同会議内で使用予定のスライドでは「中学・高校生のネット依存が疑われる者の割合の変化」などとして、2017年時点でのゲーム依存の可能性の中高生の人数が93万人であることや、その水準が国際的にも高いことなどが指摘・示唆されています。

ただし、国際カジノ研究所の所長である木曽崇氏はこれらの情報に対して問題点があることを指摘。このスライドに使用されている久里浜医療センターによる全国調査が社会的実体と乖離しているという見方を示しています。氏の指摘の詳細は下記の通りです。

今回、久里浜医療センターが行ったゲーム依存(正確にはゲーム障害)に関する全国調査には以下のような大きな問題があります。

1) 今回、久里浜医療センターが発表する「中高生のうち93万人が…」とされる数字はあくまで「依存が『疑われる』人」を抽出する為のスクリーニングテストによるものです。今回厚労省から事前公布されている樋口氏のプレゼン資料を見ると、その調査手法(抽出手法)としてyoungによるスクリーニング手法を使っていますが、当該調査手法は数あるスクリーニングの手法の中で最も「疑いのある者」を広範に抽出するものとして知られており、その中から実際に医師の診断の受けて「依存(障害)である」と判断される人はごく一部です。要は、同センターが発表する93万人という数字の中には「本当は依存ではない者」が大量に含まれており、社会的実体と乖離し過ぎている為、本来はこういった社会的傾向示す数字として利用されるのにはそぐわないものです。(本来は「医師の診断」とセットで医療的な目的をもって使われるもの)

2)次に挙げられる問題は、この数字をその他の国で行われた調査結果と比較することの是非です。今回厚労省から事前公布されている樋口氏のプレゼン資料を見ると、彼らが行ったスクリーニング調査の結果を各国でこれまで行われた調査と比較するような資料が存在します。しかし、世の中には異なる複数のゲーム依存の疑いをスクリーニングする調査手法が存在しており、前出のとおり彼らが利用したYoungによる調査手法は、他の手法と比べて常に「大きく」数字が出てしまう手法です。この様に異なる調査手法で算出された「疑いのある人」の数や比率を、諸外国で行われたその他の調査結果と単純比較しその数値の高/低を論ずること自体があってはならないことです。
また、同氏はこれらの数字や資料が過剰なニュースになる可能性を伝えており、各報道機関内に対し注意を促しています。香川県のゲーム依存症条例を皮切りに盛り上がる国内ゲーム規制論ですが、果たして同会議の結果は国内世論や各種規制にどのような影響を及ぼすのでしょうか。なお、WHOの「ゲーム依存症」認定に際しては安易に誤診が引き起こされる可能性が指摘されており、少なくとも日本においては世界に先駆けその傾向が見られてしまったのかも知れません。

同会議に関する全資料や概要はこちらから確認可能です。 Game*Spark 吉河卓人