若く丸顔、どこか得体が知れない雰囲気を漂わせる 織田信長

引用元:夕刊フジ
若く丸顔、どこか得体が知れない雰囲気を漂わせる 織田信長

 【麒麟がくる 10倍楽しむキーパーソン】

 NHK大河「麒麟がくる」、第二の主人公ともいえるのが織田信長だ。演じるのが染谷将太と聞いて、意外に思った方も多いのでは?

 なにしろ大河の信長といえば、大柄こわもて大魔王イメージで一貫してきた。「太閤記」(1965年)の高橋幸治はじめ、「国盗り物語」(73年)の高橋英樹、「おんな太閤記」(81年)の藤岡弘、「徳川家康」(83年)の役所広司、「信長-KING OF ZIPANGU」(92年)の緒形直人。さらには「秀吉」(96年)の渡哲也、「功名が辻」(2006年)の舘ひろしの二大石原軍団信長も忘れがたい。その点、染谷は若く丸顔。どこか得体が知れない雰囲気を漂わせる。

 斉藤道三(本木雅弘)の娘、帰蝶(川口春奈)との政略結婚は、信長が15歳なので、本作での初登場はその年ごろか。いとこの帰蝶に「信長という男を見てきてくれ」と頼まれた光秀(長谷川博己)の目の前に現れたのは思春期信長なのね…。

 染谷といえば、ベネチア国際映画祭でマルチェロ・マストロヤンニ賞を獲得した「ヒミズ」の園子温はじめ、「天地明察」の滝田洋二郎、「悪の教典」の三池崇志など日本の名だたる監督作品に出演する若手演技派だ。三谷幸喜監督の「清須会議」では、信長とともに本能寺の変で散る森蘭丸を演じた彼がいよいよ信長役というのも感慨深い。

 染谷信長の不思議な雰囲気の源は父、信秀(高橋克典)と継室の母、土田御前(檀れい)との関係にある。織田家は今川義元(片岡愛之助)や光秀が仕える道三のライバルとしてしばしば激突。信秀は尾張の海運を握り、勢力拡大に経済力が欠かせないことに早くから気づいた先進的な武将だったといわれる。その点は信長にも引き継がれていく。とはいえ、屋敷から飛び出して領民とつきあい、ときには噂の化け物の正体を探って母からは疎まれるばかり。母は弟の信勝(木村了)ばかりをかわいがるのである。檀は監督に「信長をいじめてほしい」と言われたという。やがて迎える父の死と弟との確執、悲劇的な結末。信長の人間性の原点ともいえる序盤の家族問題も見せ場となりそうだ。 =おわり(時代劇コラムニスト・ペリー荻野)  

 ■染谷将太(そめたに・しょうた) 1992年9月3日生まれ、27歳。東京都出身。7歳から子役で活動。2011年、「ヒミズ」(園子温監督)でベネチア国際映画祭のマルチェロ・マストロヤンニ賞を受賞した。以降、多くの映画、ドラマで活躍している。