アリ・アスター監督が初来日! 最新作でカップル破局を熱望?「レガシーを世の中に残して」

アリ・アスター監督が初来日! 最新作でカップル破局を熱望?「レガシーを世の中に残して」

 長編デビュー作 『ヘレディタリー/継承』(18)で世界から注目されるアリ・アスター監督が30日夜、都内で開催された最新作『ミッドサマー』の来日舞台あいさつ付き先行上映に登場。本作の製作のきっかけや、好きな日本映画についてユーモアを交えて語った。

【写真】アリ・アスター監督が初来日! 『ミッドサマー』来日舞台あいさつの様子

 『ミッドサマー』は、アスター監督が手がける新感覚スリラー。不慮の事故で家族を失ったダニー(フローレンス・ピュー)が、大学で民俗学を研究する恋人や友人と5人で、スウェーデンで開かれる“90年に一度の祝祭”を訪れ、悪夢の出来事に遭遇する様を描く。

 アスター監督は「日本映画が大好きです。初来日なのでとてもワクワクしています」とニッコリ。2週間滞在する予定で「探検できるのをワクワクしている。京都に行くつもりです。もしほかに何か行くべきところがあれば提案してほしい」と観客に呼びかけた。

 “恐怖映画の歴史をくつがえす”と評される本作の製作当初について「企画自体は、撮影前の『ヘレディタリー』の脚本を読んだスウェーデンのプロデューサーが僕にアプローチしてくれて、『夏至祭の間、アメリカ人がスウェーデンの特別なコミューンを訪れて…という映画をつくりたい』と言われたのが全ての始まり。正直、そのアイデアだけでは響かず、やりたいかどうか自分ではわからなかった」と回想。

 それでも「僕はちょうどそのとき付き合った彼女と別れたばかりで、これを失恋ムービーにできるんじゃないかと思ったんだ。あるいは恋愛関係の終焉、別離を描いた映画にすれば面白いものになるかもしれないと思い始めた。そう考えると、夏至祭というのが、アイデアをふくらまるために魅力的だと思えた」と製作秘話を明かした。

 本イベントのMCをつとめたスウェーデン出身のLiLiCoは、笑いながら「よくも私たちが誇るすばらしい夏至祭を、ここまでとんでもないものにしましたね!」と恨み節。それを聞いてアスター監督は笑みをこぼし、「ごめんなさい」と素直に謝罪した。

 また、本作はどんなジャンルに分類できるか問われたアスター監督は「『ヘレディタリー』はホラーだと思うけど、この作品はホラーだとは思っていない。僕にとっても色んな風に見られる作品です。例えばダーク・コメディー、民間伝承物、主人公のダニーの観点から言えばおとぎ話。そして何より、失恋ムービーだと考えています」と解説。

 カップルに向けて「今付き合っているけど、本当は一緒にいるべきでない運命だと考えるカップルには、ぜひ“『ミッドサマー』を観て別れた”というレガシーを世の中に残していってほしい」とブラックジョークを飛ばした。

 アスター監督は日本映画にも言及。「小さい頃から日本映画を見て育った。好きなのは『雨月物語』(53)、『藪の中の黒猫』(68)、『鬼婆』(64)、『怪談』(64)、『愛のコリーダ』(76)。この作品の準備期間に一番名前が出たのは今村昌平監督で、タイトルは『楢山節考』(83)や『神々の深き欲望』(68)。これらの作品について一番話し合ったという。現代で活躍する監督も好きです。黒沢清監督だったりとか、園子温監督とは今日取材で対談できた」と日本映画通の一面を見せた。

 映画『ミッドサマー』は2月21日より全国公開。