実写化で話題、『耳をすませば』の近藤喜文監督が残した「希望の灯」とは?

引用元:マグミクス
実写化で話題、『耳をすませば』の近藤喜文監督が残した「希望の灯」とは?

 25年前に劇場公開された1本のアニメ作品が実写映画化されることで、再び注目を集めています。近藤喜文監督の長編アニメ『耳をすませば』(1995年)です。2020年1月14 日、清野菜名&松坂桃李W主演作として、実写映画化されることが発表されました。アニメ版のファンの間では、実写化を喜ぶ声と懐疑的な声とに分かれているようです。

【画像】思い出がよみがえる!『耳をすませば』の絵コンテや背景美術(7枚)

 連続TVドラマ『白夜行』『義母と娘のブルース』(TBS系)などで知られる平川雄一朗監督がメガホンをとる実写版『耳をすませば』は、読書好きな中学生の雫とバイオリン職人を目指す聖司との出会いを描いた「あの頃(過去)」と、オリジナルとなる「10年後(現在)」との二重構造の物語になるそうです。『トットちゃん!』(テレビ朝日系)で若き日の黒柳徹子さんを演じた清野菜名さんが雫役、音楽映画『蜜蜂と遠雷』(2019年)でピアニストを演じた松坂桃李さんが聖司役に配役されています。

 アニメ版のイメージに合った配役から実写化に期待が寄せられる一方、アニメ版の完成度が高かっただけに、主人公たちが大人になってからのエピソードは余計だと感じる人もいるようですが、この機会に、名作の誉れが高いアニメ版『耳をすませば』がどんな作品だったかを振り返ってみたいと思います。

郊外の団地を舞台にした青春ストーリー

 月島雫(声:本名陽子)は東京都郊外の団地に暮らす中学3年生の女の子です。電車で見かけた猫を追いかけたことがきっかけで、猫のお気に入りのアンティークショップ「地球屋」に雫は顔を出すようになります。学校とも自宅とも異なる「地球屋」は、雫にとって心地よい刺激を与えてくれる場所でした。「地球屋」の主人には孫息子の聖司(声:高橋一生)がおり、雫は聖司と交流を深めていくことなります。

 聖司は雫と同じ中学に通う同学年同士。聖司は中学を卒業したら欧州に渡り、バイオリン職人になるというはっきりとした夢を持っています。同い年の聖司が自分よりもずっと大人びていることに雫はショックを受けますが、同時に雫も自分の進むべき道について、そしてそのために今やらなくてはいけないことを懸命に考えるようになるのです。

 中学卒業を前にして、聖司は2か月間だけイタリアの工房で職人見習いとして働くことが決まりました。本好きな雫はその2か月間で、ひとつの物語を書き上げることを決意します。雫が一心不乱になって物語を書き上げた翌朝、ふと窓の外を見ると団地の下にイタリアから帰ってきた聖司が姿を見せていました。以心伝心です。自転車に乗った2人は街が見渡せる丘の上に上がり、一人前になったら結婚しようと約束を交わすのでした。