鈴木邦男は「左右問わず人に愛された」中村真夕監督が語る

鈴木邦男は「左右問わず人に愛された」中村真夕監督が語る

 異色の政治活動家・鈴木邦男氏(76)に密着したドキュメンタリー映画「愛国者に気をつけろ!鈴木邦男」が2月1日から14日までポレポレ東中野で公開される。監督の中村真夕氏に今、なぜ鈴木邦男なのかを聞いた。

「鈴木さんと私の父、正津勉(詩人)が同じジャーナリスト専門学校で教えていた関係で昔からよく知っていました。父もその一人ですが、激動の政治の季節、60~70年代をかいくぐった団塊の世代への興味もあり、もしかしたら鈴木さんを撮ることで、団塊世代の真実が見えてくるのではないかと思ってカメラを回し始めたんです」

 中村さんは16歳でロンドン大に留学。卒業後、アメリカに渡り、コロンビア大学大学院を卒業。ニューヨーク大学大学院で映画を学んだという異色の経歴。

 鈴木邦男氏は早大時代に今の日本を牛耳っているといわれる日本会議の前身である全国学協の代表になったが失脚。その後、早大の後輩、森田必勝が三島由紀夫と共に市谷の自衛隊駐屯地で自決したことに衝撃を受け政治団体「一水会」を立ち上げ、過激な行動右翼として活動した。しかし、最近では、「愛国心という言葉は危険だ」「不自由な自主憲法より、自由な押しつけ憲法がいい」と安倍首相の進める9条改憲には反対の立場を取っている。 鈴木邦男は「左右問わず人に愛された」中村真夕監督が語る 「愛国者に気をつけろ!鈴木邦男」/(提供写真) 「左翼の過激な人たちとも仲がいいし、オウムの元信者やグラビアアイドルからも信頼が厚く、愛されている。若い頃の過激な行動を知らない私にとっては優しいおじさんにしか見えないんです」

 映画では家賃6万円のアパートで質素な生活を送る鈴木氏やほかの右翼団体の若者たちに「裏切り者」と罵声を浴びせられる姿も描かれる。

「鈴木さんは自分と異なる意見、思想の人たちとも積極的に交流し、学ぼうとする姿勢があります。街頭演説にヤジを飛ばした人を排除したり、『こんな人たちに負けない』と言い放つどこかの国の首相とは大違い。ストイックともいえる鈴木さんの姿に迫ることが今の日本を覆うヘイトとフェイク、不寛容を突破できる何かの糸口になればうれしいです」

 上映終了後、日替わりゲストを迎えてトークショーを開催。鈴木氏は現在病気療養中なので体調によって出演する日もあるという。ゲストは上祐史浩、松本麗華(麻原彰晃の三女)、内田樹、松元ヒロ、寺脇研、足立正生ら多彩。

(取材・文=山田勝仁)