「Journey to the Savage Planet」レビュー

引用元:Impress Watch
「Journey to the Savage Planet」レビュー

 505 GamesとTyphoon Studiosは、コミカルSFアドベンチャーゲーム「Journey to the Savage Planet」のダウンロード版を1月28日に発売する。パッケージ版の日本国内発売は現時点で未定。また、ダウンロード版はEpic Games Store専売となる。

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 一人称視点のFPSとRPGの要素を併せもった本作は、2017年創業のTyphoon Studiosが開発し、満を持して世に送り出す第1弾のゲームタイトル。プレーヤーは業界第4位の星間探査会社と評される「キンドレッド・エアロスペース社」の新入社員として、未開拓の惑星「AR-Y 26」を探索していく。

 当初わずか3名で制作が始まったという本作の魅力を一言で表すなら、まさにその“手作り感”にある。行く手を阻む謎を解きながら道を切り開くプレイ感覚は、アドベンチャーゲームの基本を押さえていながらも、その世界観は大作SFゲームとは明らかに一線を画す。カラフルでド派手な色合いの惑星に、キモカワイイの境界線をギリギリに攻めた生物たちのデザイン、そしてコメディという言葉では生ぬるいブラックユーモアの要素など、今回のレビューでは、そんな手作り感あふれる本作の魅力についてお伝えしていきたい。

■ブラック企業の社員となって未知の惑星の謎に挑め!

 プレーヤーである主人公が目を覚ますと、そこは宇宙船「ジャベリン」の中。どうやら目的地の惑星AR-Y 26に到着したようだが、何か様子がおかしい……。室内ではキンドレッド・エアロスペース社のCEO「マーチン・ツイード」からのビデオメッセージが流れ、宇宙船の燃料は片道分しかないこと(帰りの分は自分で何とかしてね♪)、必要な装備やアイテムは現地でリソースを調達して「3D物体復元機」で作る必要があること(経費削減だから仕方ないね♪)がやんわりと伝えられる。そう、プレーヤーはこの時点でとんでもない現実を突きつけられる。「あっ俺、ブラック企業に入っちゃった」という圧倒的に絶望しかない現実を……!!

 かくしてゲーム開始時から頭が痛くなりそうな状況に身を置きながらも、社畜的な働き方を強いられたプレーヤーは未知の惑星に降り立つ。絶妙に口が悪いサポートAIの「エコ」の助けも借りつつ、着陸地点を含めた4つのバイオーム(生物群系)を調査していき、惑星に隠された秘密を解き明かすのが本作の目的だ。

 着陸地点である第1のバイオームでは、氷に覆われたエリアの他に、緑が豊かな森林地帯や溶岩が煮えたぎる洞窟など、早速いくつもの自然環境を探索することになる。氷の洞窟を抜けると、そこには奇妙な見た目の動植物や地形といった独特な光景が広がる。ブラックユーモアたっぷりな導入からは想像もつかないポップでカラフルな世界を目にして、ここで筆者は一気に本作に引き込まれてしまった。宇宙服に装備されている「スキャナー」で目に付いた動植物や謎の構造物をスキャンしまくり、情報をアップデートしまくりで、気づいたら新たなミッションが次々に発生。メインミッション以外はやるもやらないもプレーヤー次第なので、気の赴くままに未開のエリアに足を踏み入れ、時には寄り道をしたり、サイドミッションに挑んだりと、自由に惑星の探索が楽しめる。

■行く手を阻むクリーチャーとの触れ合い(戦い)を楽しもう!

 未知の惑星には、人畜無害な生物もいれば、プレーヤーに敵意を向ける凶暴なクリーチャーも生息する。たとえば目がいびつに大きく、丸い鳥のような「パフバード」は惑星の至るところで見かけるが、異様な外見に反して基本的に攻撃してこないので、どうにも拍子抜けしてしまう。初めのほうこそ右手のピストルで試し打ちなどしていたが、餌を探し回るのどかな様子を見ていると、段々と可愛く思えてきて、手を出しづらくなるから不思議だ。

 一方で、タコのような見た目で墨を吐きつけてくる「ジェリーワフト」は非常に好戦的で、視界に入るとすぐに攻撃してくる。右手の武器で応戦することも可能だが、接触を避けて逃げることもできるので、プレーヤーによって生物たちとの接し方は様々だろう。その時々の気分で応戦したり、逃げ回ったりと、リアルな冒険模様を楽しんでしまう魅力が本作にはある。

 生物だけでなく、惑星の植物も色とりどりで個性豊かだ。プレーヤーを癒したり、体力ゲージをアップさせる植物がある一方で、ガスをまき散らしたり、爆発性のある植物も存在する。探索を楽しみつつ、周囲の環境には注意深く目を配ろう。また、基本的には戦うも逃げるも自由な本作だが、時には避けられない戦いに遭遇することも。各バイオームの探索中に遭遇するボスモンスターは、その豊富な攻撃手段でプレーヤーを苦しめてくるので、この時ばかりはどっしりと構えて全力で立ち向かおう! 探索の自由度と手に汗にぎるボス戦の絶妙なバランスのおかげで、トライ&エラーが苦にならないのも本作の大きな特徴だ。

■装備を強化してギミックを解く、アドベンチャーならではの面白さ

 独特な世界観やクリーチャーが魅力の本作だが、知恵を駆使して行く手を阻むギミックを解いたり、入手した素材で新たな装備を作成・強化して道を切り開いたりと、アドベンチャーゲームとしての面白さも十分に味わうことができる。たとえば道を塞ぐ肉食植物に遭遇した際、スキャンによってその植物がパフバードを好むことが判明し、さらに目の前には一心不乱に餌を貪るパフバードの姿が……。つまり、プレーヤーが先に進むためには、どうにかこの哀れなクリーチャーをおびき出して生贄に捧げる必要がある、というわけだ。アドベンチャーゲームとしての基本は押さえつつ、本作のギミックはかように自然界の残酷な一面を併せもっており、そこがまた妙なリアリティを生み出している。

 装備の作成によって行動範囲が広がるつくりも、探索を進めるインセンティブになっており、本作の止め時が見つからない要素のひとつだ。ジェットパックで2段ジャンプが可能になり、また「プロトンテザー」という装備を作成して高所を登れるようになると、それまで平面的だった探索は3次元へと広がりを見せ、プレーヤーは広大な惑星を冒険していたことに改めて気づかされる。そこに至るまでのゲームデザインが非常にうまく、まだ行ってなかった場所はないか、通り過ぎた場所にも何か謎があるんじゃないかと、つい時間を忘れてあちこち探し回ってしまうのだ。

■全編を貫くブラックユーモアと今後のアップデートにも期待!

 惑星探索アドベンチャーゲームとしての面白さに、ユニークな生物デザインも魅力的だが、大作SFゲームにはない独特の手作り感を生み出しているのは、何と言ってもその徹底したブラックユーモアにある。実際にあり得そうなハチャメチャ企業の設定や、船内で流される本気とも冗談ともつかないグロテスクな広告の数々に、SFとしてのリアルに徹したリスタートの表現をイジるテキストなどは、本作ならではだろう。かなり人を選ぶ部分ではあるが、一度ハマったら簡単には抜けられないブラックホールの如き重力は、筆者の心を捉えて放さなかった。

 サイドミッションや図鑑のコレクションなど、本作はやり込み要素も豊富にある。また、更なる追加コンテンツやアップデートも予定されているため、本編をクリアしてもまだまだ遊びが尽きそうにない。ただ、試遊の時点では音声と字幕のタイミングにずれが見られる箇所もあったので、遊びやすさという点では今後の改善に期待したいところだ。

 なお、今回のレビューでは体験できなかったが、本作では2プレーヤーによるオンライン協力プレイも可能である。孤独な惑星探索を楽しむのも悪くないが、このユーモアに満ちた世界で他のプレーヤーとともに笑い、驚き、協力して探索を進めることもきっと素晴らしい体験になるだろう。というより、筆者はもうCEOの態度に怒り心頭なので、一刻も早く誰かにこの気持ちを共有したい! というのが正直なところだ。求む! ブラック企業に抗う仲間たち。大企業の横暴に負けず、惑星の謎を解き明かそう!

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