里見香奈女流名人、地元で連勝「出雲でよい結果を出せてよかった」林葉直子さん超える歴代単独最多のV11王手

引用元:スポーツ報知
里見香奈女流名人、地元で連勝「出雲でよい結果を出せてよかった」林葉直子さん超える歴代単独最多のV11王手

 将棋の第46期岡田美術館杯女流名人戦5番勝負の第2局(主催=報知新聞社・日本将棋連盟、出雲市、特別協賛=(株)ユニバーサルエンターテインメント)が26日、島根県出雲市の「出雲文化伝統館 松籟亭」で行われ、先手の里見香奈女流名人(27)=清麗、女流王位、倉敷藤花=が113手で挑戦者の谷口由紀女流三段(26)に勝ち、2連勝で防衛に王手をかけた。穴熊の堅陣を敷き、一瞬のスキから攻撃に転じて後手陣を切り裂いた。出雲生まれの女流名人は、今年制定の「出雲(126)の日」に完勝譜を地元ファンに披露。第3局は女流棋戦歴代単独最多の11連覇の懸かる一局になる。

 拍手に迎えられた里見は赤く染めた頬を少し緩ませた。終局後、大盤解説会場の壇上で220人もの地元ファンの前であいさつ。「長時間のご観戦、ありがとうございました。昨日の前夜祭から励ましていただき、出雲でよい結果を出せてよかったです」。両親や祖父、古くからの知人、応援し続けてくれるファンに感謝の思いを伝えた。

 地元商店街が今月制定したばかりの「出雲の日」でも里見はいつも通り、いやいつも以上に強かった。「速い動きよりも、ゆっくりとした手の流れで自分の棋風に合っていました」。居飛車を採用し、普段は「単調になるから」と好まない穴熊に組んだ。

 序盤は頼りなかった囲いを巧みな順で銀冠に組み直し、出雲大社の大鳥居のように堅牢(けんろう)な城壁へとモデルチェンジ。互いに中央で角を打ち合う中盤戦で谷口のわずかな緩手を正確にとがめると、一気に相手陣を攻略した。「読み切れてなくても、自玉が堅いので攻めに専念できました」

 慣れない穴熊を的確に指しこなせた背景には、真新しい記憶がある。23日に関西将棋会館で行われた順位戦B級1組・菅井竜也八段と斎藤慎太郎七段の相穴熊戦の激闘を現地で深夜まで検討。さらに、出雲入り前日の同A級・羽生善治九段対久保利明九段戦の相穴熊戦も真夜中まで熱視線を送った。「タイトル戦やA級のような最高峰の舞台で振り飛車の先生の将棋を見るのはすごく楽しいです」。人の将棋を見たことがすぐ生きるほど甘くはない世界だが、本譜の指し回しは向上心の結晶と言える。

 年末年始も帰省した。NHK紅白歌合戦では、出雲市出身で大社高の先輩でもある竹内まりやの美声に耳を澄ませた。除夜の鐘を聴いた後は、初詣で出雲大社へ。「毎年混雑するので、実は初めてだったんです。そしたら、やっぱり車が大渋滞してて…」。ならばと、兄の卓哉さん(31)、妹の咲紀女流初段(23)と一緒に実家から往復約15キロを踏破した。「山道を歩けて楽しかったです。おみくじは…末吉でしたけど…」

 第3局では、1981~90年に女流王将V10を達成した林葉直子さんを超える女流棋戦歴代単独最多の11連覇を目指す。11期目の女流名人は清水市代女流六段の10期を上回る歴代最多記録にもなる。「2局とも力戦で力を出し切れたので、次局も勉強して臨みたいです」。揺るがない「出雲の大鳥居」。10代からの愛称「出雲のイナズマ」で語り切れるほど、今の里見は単純ではない。(北野 新太) 報知新聞社