『仮面ライダーゼロワン』放送開始から5か月 見えてきた「映し出されるもの」

引用元:マグミクス
『仮面ライダーゼロワン』放送開始から5か月 見えてきた「映し出されるもの」

 2019年9月1日(日)から放送されている、特撮TVドラマ『仮面ライダーゼロワン』。令和初となる『仮面ライダー』の放送開始から、約5か月が経ちました。まず、第1話を振り返ります。

【画像】10年ぶり、昆虫モチーフの主人公ライダー

「お前を止められるのはただひとり! この俺だ!」

 被害もお構いせんと暴走する「ヒューマギア」に向けて放たれたこのセリフ。発言者は、元・お笑い芸人にして飛電インテリジェンス二代目社長を務める主人公・飛電或人(ひでん・あると)です。

 彼は鳴かず飛ばずのお笑い芸人生活から一転、祖父・飛電是之助が遺した飛電ゼロワンドライバーを使い、令和発の新ヒーロー『仮面ライダーゼロワン』に変身。遊園地で暴れ回るベローサマギアを食い止め、結果として最先端のテクノロジー技術を擁する巨大企業のトップに選ばれました。

 第1話を見るだけで、改めて『仮面ライダーゼロワン』は約20年続いた平成ライダーシリーズの後を担うだけでなく、新時代の到来を予期させる作品だと感じられます。

 初代『仮面ライダー』と同じくバッタをモチーフにしたデザインに、黒と黄色がメインのスタイリッシュなボディーカラー。そして人間社会に人工知能(AI)が普及した世界観(時代設定は2019年)。現実世界に人型AIロボットが行き渡るのは当分先かもしれませんが、人間とAIの関わり方を日曜朝の番組に取り上げたのはなかなかにチャレンジングな試みだと思います。

 ちなみにゼロワンと言えば、『キカイダー01』(1973年)や『ウルトラセブン』(1967年)に登場するアンドロイド少女ゼロワンなど、半世紀以上の歴史を誇る特撮作品においてなじみのある名前。もし「令和(れいわ)→レイワン→ゼロワン」といったネーミングだとしても、どこか因果めいていると思うのは筆者だけでしょうか。 『仮面ライダーゼロワン』放送開始から5か月 見えてきた「映し出されるもの」 『仮面ライダーゼロワン』 (C)2019 石森プロ・テレビ朝日・ADK EM・東映

『仮面ライダーゼロワン』が映し出すものとは

 さて、そんな『仮面ライダーゼロワン』が映し出すのは人間とAIの共存だけではありません。本作の先進性は、AIの普及に伴う功罪の描写に加え、ラーニングを通して職能や戦闘技術を独自に学習する“AIの成長“にあると筆者は考えています。

 警備員に寿司職人、声優に看護師など、これまで本編にはさまざまな職業に従事するヒューマギアが20体近く登場。その多くが前提としてプログラムされた目的を足がかりに、独自の成長を遂げているのです。

 例えば第7話「ワタシは熱血ヒューマギア先生!」に登場した坂本コービー。彼は中学校で運用されている教師型ヒューマギアで、放課後は男子バスケットボール部のコーチとして生徒の練習を厳しく指導。しかしあまりに熱が入ったのか、規定の時間を超えたハードな練習メニューを生徒に課しており、この働きを良く思わない他の教師や保護者から疎まれています。

 しかしこの坂本コービーの行動は、「絶対に試合で勝ちたい」という生徒の想いに応えて生まれたもの。日々の指導中に繰り返したラーニングがトリガーとなり、単なる弱小バスケットボール部の見守りロボットではなく、時に人の心を動かす、人間以上に熱いヒューマギアへ変化しました。

 また戦闘技術の学習という点では、物語の序盤から或人たちの前に立ちはだかった暗殺ちゃんも見逃せません。何度も何度もトドメを刺されて爆発四散するも、激しいバトルを繰り広げる度にアーマーパーツや武装が増加。第12話「アノ名探偵がやってきた」では、強化フォーム実装前のゼロワンや仮面ライダーバルカンを追い詰める程にパワーアップを果たします。

 倒される度にラーニングを行い、その経過を踏まえて顔つきや言動が段々と変わっていった暗殺ちゃん。最期はシャイニングホッパーの前に敗北しましたが、その様子はいつか未来で訪れるかもしれないシンギュラリティ(技術的特異点)をリアルに映し出していたのではないでしょうか。

 放送開始から約5か月を迎え、さらに物語の深化が期待される『仮面ライダーゼロワン』。或人は社長としてどのような人生を歩むのか、ヒューマギアとの共存や滅亡迅雷.netとの戦いはどう紡がれるのか。今後の展開に目が離せません。 龍田優貴